■米・パキスタン首脳会談 ブッシュ大統領、「対テロ」協力を確認


◎核技術提供は拒否

 【バンコク=岩田智雄】南アジアを訪問中のブッシュ米大統領は四日、パキスタンの首都イスラマバードムシャラフ大統領と会談した。両首脳は国際テロ組織アルカーイダの掃討などテロとの戦いで協力していくことを確認。ブッシュ大統領イスラム過激派の先鋭化を防ぐため、ムシャラフ大統領に対し暗に民主化の進展を促すとともに、核の平和利用に協力しない姿勢を示した。


 会談後記者会見したブッシュ大統領は、テロとの戦いパキスタンと戦略的パートナーシップを続けていくと表明。「情報の共有」の必要性を強調した。


 ブッシュ大統領は、パキスタン民主化について議論の時間を長く割いたことを明らかにし、「米国は民主主義の基礎を整えるため協力を続ける」と述べた。


 ムシャラフ政権は二〇〇一年の米中枢同時テロ後、テロとの戦いなどで対米協力路線に転換。同時に、米国からの経済協力を取り付けるなど良好な関係を維持してきた。


 一方で、部族地域などでテロリストの掃討作戦を強めるムシャラフ政権に対し、国内のイスラム保守勢力からの反発は強い。イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画問題が起きてからは特に、各地で反米デモが頻発し、二日には米外交官が自爆テロで殺害されるなど同国では、不安定な情勢が続いている。


 軍事クーデターで政権に就いたムシャラフ大統領は、陸軍参謀長をいまだに兼任していることを野党から批判されており、パキスタンでは民主化は敏感な問題だ。だが、ブッシュ大統領は依然不安定な政情の背景に、民主化の遅れや貧富の格差があるとみて、あえてこの問題を議論したといえそうだ。


 さらに、米国がインドとの間では合意し、パキスタンも求めている民生用核技術の提供についてブッシュ大統領は、「パキスタンとインドは異なる必要性と歴史を持っている」として、改めて拒否する姿勢を示し、民主主義国であるインドと核技術の流出が起きたパキスタンに対して異なる対応を見せた。


 ただしブッシュ大統領は、パキスタンがインドとともに進めているイランから天然ガスをパイプラインで引く計画については、反対しないことを表明、パキスタンのエネルギー政策にも一定の理解を示した。(産経)