スンニ派 連立参加前向き モスク引き渡し条件


◎【カイロ=加納洋人】イスラムシーア派聖廟爆破事件以降、スンニ派シーア派の衝突が続くイラクで二十七日、首都バグダッド周辺で、三日間にわたって敷かれていた日中の車両通行禁止措置が解除された。各派の政治、宗教指導者による協議も続いており、各派が妥協点を見いだし、宗派抗争の沈静化を図ることができるかが焦点となっている。

 現地からの報道によると、バグダッドでは二十七日朝から、街に車の流れが戻り、商店も開いた。しかし、同日、首都北西部のシーア派地域に迫撃砲攻撃があり、ロイター通信によると、四人が死亡、十三人が負傷した。前日の二十六日にもシーア派地域への迫撃砲攻撃などが相次ぎ、同日だけで、全土で少なくとも二十九人が死亡しており、流血の事態は依然としてやんでいない。イラク国防省幹部は二十七日、首都に装甲車を展開させ、武器の不法所持者を逮捕すると発表した。


 こうした中、事態の沈静化に向けた各派政治、宗教指導者の協議が続いており、連立交渉の凍結を表明していたスンニ派会派「イラク合意戦線」の指導者、アドナン・ドレイミ氏は二十七日、「シーア派が掌握したスンニ派モスク(礼拝所)をスンニ派に引き渡すことを条件に、連立交渉を再開させる用意がある」と述べ、連立政権参加に前向きな意向を示した。




クルド自治政府、統一首相に民主党幹部を選出


イラク北部クルド自治区の民族議会はこのほど、自治政府の首相に、クルド民主党(KDP)幹部のネチルバン・バルザニ氏を選出した。
 クルド同盟筋によると、ネチルバン氏は来月末までに統一自治政府の組閣を行う。ただ、内務、財務、法務、クルド人兵担当の重要4省は統一の対象から除外、1年以内の完全統一を目指す。(カイロ支局)(読売)




■独情報機関がバグダッド防衛計画を米に流す=イラク開戦前に―NY紙


◎【ニューヨーク27日】27日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、米軍当局者の話として、ドイツはイラク戦争開戦の1カ月前に、フセインイラク大統領のバグダッド防衛計画に関するドイツ情報機関の情報を米軍司令官たちに通報していたと報じた。(写真は今月ミュンヘンイラク戦争反対デモをする人たち)

同紙によれば、バグダッドにいたドイツ情報機関の工作員2人がフセイン大統領のバグダッド防衛計画のコピーを入手、これをドイツ当局者が米軍司令官たちに渡した。ニューヨーク・タイムズは、ドイツ情報機関は同国政府が公に認めているよりもっと重要な支援を米国に与えていたことになると指摘した。同紙によれば、ドイツからの情報で米軍はフセイン大統領が最も忠実な部隊をどこに、どのように展開する方針かを含め、イラク最上層部の作戦を知ることができた。

また同紙によると、イラク戦争に表向きは反対しながら裏で便宜を供与していた国はドイツだけでなかった。エジプトは給油機へのアクセスを認め、サウジアラビアは米特殊部隊のサウジ領内からの作戦開始を許可したという。〔AFP=時事〕




イラク人1300人超死亡 聖廟爆破後の衝突で


◎【ワシントン27日共同】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は27日、イラク中部サマラで22日起きたイスラムシーア派聖廟(せいびょう)の爆破事件以降の衝突で、イラク人1300人以上が死亡したと伝えた。バグダッドの遺体安置所当局者の話としている。

同紙はこの死者数はこれまでの米軍発表やメディア報道の3倍以上に当たると報じている。

この数字が事実とすれば、シーア派スンニ派の衝突は内戦状態に達している公算が大きい。

同紙によると、バグダッドの遺体安置所には27日昼の段階で、数百人の遺体が安置され、遺族らによるとシーア派の反米指導者サドル師派の民兵が、スンニ派住民を拉致して殺害しているという。




■米国防当局者も否定=独からのイラク軍事情報提供説


◎【ワシントン27日】ドイツ情報機関が2003年3月の米軍のイラク侵攻前に、イラク側の作戦計画のコピーを米軍に渡していたとの27日付のニューヨーク・タイムズ紙の報道について米国防当局者は同日、同紙が引用したとする機密の軍事研究にはそのようなことは書かれていないと述べた。同当局者は、機密の事柄につき自分の名前を明かさないよう求めた。(写真はフセイン大統領の写真に映じるカラシニコフ銃の銃身=2003年3月9日バグダッドで撮影)

ニューヨーク・タイムズは、この機密の研究は米合同軍司令部が昨年行ったとしている。同司令部スポークスマンはイラクの観点からそんな戦争研究を行ったことを認めたが、ドイツがイラク作戦計画を米側に提供したとの部分が同研究にあったとは知らないと述べている。〔AFP=時事〕




イラクで衝突なお、26人死亡 外出禁止令は解除


イラクでは27日も各地で衝突が相次いだ。ロイター通信によると、バグダッド東部のスンニ派モスクへの爆弾攻撃で4人が殺害されるなど、26人が死亡。昼間外出禁止令が解除されたバグダッドでは街に人通りが戻ったが、イラク軍の戦車が各所に配置されるなど厳重な警戒態勢が敷かれた。

 イラク国防省は、22日のサーマッラでの聖廟(せいびょう)爆破事件後から27日までに武装勢力35人を殺害し、487人を拘束したと、27日発表した。また内務省は、イラクアルカイダ機構のザルカウィ幹部の側近のシリア人を拘束したと発表。バグダッド南東部の町ではスンニ派武装勢力内務省特殊部隊との間で銃撃戦が繰り広げられ、隊員8人と武装勢力5人が死亡したという。

 一方、中断していた正式政府の組閣交渉には、再開の兆しが見られる。聖廟爆破事件後に頻発したシーア派によるスンニ派攻撃に抗議して、スンニ派政党「イラク合意戦線」は組閣に向けた協議への参加をボイコットしていたが、27日には同党のドレイミ代表が「シーア派の占拠下にあるスンニ派モスクが明け渡されれば、政権協議のテーブルにつく」と述べ、交渉再開への条件を提示した。(朝日)




イラクで内戦回避の方向、連立交渉は妥結見通しなし


◎ 【カイロ=柳沢亨之】イラク中部サマッラで22日起きたイスラムシーア派聖廟(せいびょう)爆破事件に端を発するシーア、スンニ両宗派間の暴力の応酬が沈静化の兆しを見せ、一時は現実味を増した「内戦勃発(ぼっぱつ)」という最悪の事態はひとまず回避される方向となってきた。
 危機感を強めた各派指導者の譲歩が土壇場で奏功した形だ。だが、対立の根は深く、次期政権発足のための連立交渉妥結の見通しは、まだ立っていない。

 移行政府は27日、バグダッドと周辺3県で実施していた外出禁止令や国境、空港の閉鎖措置を解除した。バグダッド市民によると、28日には普段の約7割の人出が見られるようになった。

 バグダッドでは28日、自動車爆弾3発による連続テロが起き、30人前後が死亡したが、22日の事件直後に150人前後の市民を犠牲にしたシーア、スンニ両派のモスク(礼拝堂)襲撃などの露骨な宗派間攻撃は影を潜めた。

 事態の改善には、「内戦の危機」(タラバニ大統領)を訴え、国民融和を演出した各指導者の役割が大きい。シーア派最大会派「統一イラク同盟」(128議席)指導者のハキム師は24日、「スンニ派の犯行ではない」と明言。対スンニ派報復テロに自派民兵組織が関与した統一同盟の強硬派サドル師も24日、同民兵組織の活動抑制を発表した。

 シーア派の「善意」にスンニ派連合「イラク合意戦線」(44議席)も応え、25日夜、事件直後からボイコットしていた各派間の対策協議に初めて参加。さらに、謝罪や賠償などシーア派に突きつけた要求の多くも取り下げ、連立交渉再開に応じる姿勢を示している。

 両宗派が妥協したのは、「内戦が自派の利益にならない」(消息筋)との打算があるからだ。人口の6割を占めるシーア派は「民主選挙を通じた多数派支配」を最大戦略としており、この枠組みを崩すほどの不安定は望まない。一方、先の国民議会選に初参加したスンニ派にも、イラク戦争後の武装闘争でかえって権力を失ったとの反省は強い。

 ただ、今回の事件で各派間の対立が顕在化し、連立交渉成功へのハードルを高めたと見る向きは多い。

 特に、サドル師派が報復テロに関与、イラク政治への影響力を見せつけた衝撃は大きい。同師は多国籍軍の早期撤退を要求、同様の立場を取るスンニ派との橋渡し役が期待されていた。(読売)




イラク戦争でテロの脅威増大した―35カ国世論調査


◎【ロンドン28日】英BBCワールドサービス・ラジオが28日報じた国際世論調査によると、調査対象の35カ国のうち33カ国の平均60%の人たちは米国主導のイラク戦争のおかげでテロの脅威が増大したと考えている。脅威が減少したと思うのは12%だけで、15%は影響なしと答えた。(写真はイラクバグダッド北方のタルアファルで街路のパトロール任務につくに当たり無線で連絡を取る米兵士=国防総省提供)

カナダの調査会社グローブスキャン社と米国の団体「国際政策姿勢プログラム」(PIPA)が同調査を実施した。対象者は4万1856人に上った。これによると、米軍が今後数カ月内に撤退すべきだとの意見は20カ国で大半を占めた。しかし、21カ国では、イラク新政府が要請した場合は、安定達成まで駐留続行に賛成だとする意見が多かった。

また、21カ国で、フセイン大統領の排除は間違いだったとの見方が大勢を占めた。全体では、調査対象者の45%がフセイン排除を間違いと見なし、36%が排除を支持した。〔AFP=時事〕




■首都で連続テロ、41人死亡 イラク


◎【カイロ28日共同】イラクの首都バグダッドで28日、自爆テロや車爆弾による爆発が連続して発生、AP通信によると、41人が死亡した。中部サマラで22日に起きたイスラムシーア派聖廟(せいびょう)の爆破事件の後、同派とスンニ派の間で深まった対立は緩和に向かっていたが、再燃しかねない状況となった。

バグダッド東部では爆発物を身に着けた男がガソリンスタンド前に並んでいた人々の近くで自爆、23人が死亡、50人以上が負傷した。

同じ東部の別の場所では車爆弾が爆発し9人が死亡。首都中心部のカラダ地区のシーア派モスク(礼拝所)近くでも車爆弾が爆発し、4人が死亡した。3件の爆発は30分の間に相次いで起きた。




フセインら8被告の公判、旧政権幹部は出廷せず


◎【カイロ=長谷川由紀】イラクバグダッド北郊ドゥジャイルでイスラムシーア派住民を大量虐殺した罪に問われている同国元大統領サダム・フセインら8人の被告に対する公判が28日、バグダッドイラク高等法廷で開かれた。
 公判冒頭、弁護団は、公判延期と、裁判長の罷免を要求したが、却下された。弁護団はこれに抗議して退廷した。

 この日は、前回(2月14日)に続いて旧フセイン政権幹部が証言する予定だったが、出廷しなかった。

 フセインは前回の公判で、裁判長の強硬姿勢などに抗議し、ハンストを行っていると宣言していた。弁護団によると、フセインは11日間、ハンストを行った結果、体重が約5キロ減り、健康被害の恐れが出たため、やめさせたという。(読売)