■「米の港渡すな」港湾管理にアラブ企業、米議会が猛反発


◎ニューヨーク港など米国の主要港の港湾管理業務を請け負う会社をアラブ首長国連邦(UAE)の国営会社が買収する計画が明らかになり、米議会で与野党議員の反発が噴出、ブッシュ政権が苦慮している。「9・11テロ実行犯が2人も出た国の手に我々の港を渡すな」というのが議員らの反対理由だが、預言者ムハンマド風刺画問題で反欧米感情が燃えさかっているだけに、ブッシュ大統領はアラブ世界を刺激することを懸念。21日、買収阻止法案が議会を通っても拒否権を発動する、と異例の方針を表明した。

 焦点の会社はUAEを構成する首長国の一つドバイ政府が経営権を持つ「ドバイ・ポーツ・ワールド」。英国の運輸会社「P&O」を、68億ドルで買収すると昨年11月に発表。1月下旬に最終的な契約を結んだ。

 P&Oはニューヨーク、ニュージャージーフィラデルフィアボルティモアニューオーリンズ、マイアミの6港で荷役や倉庫などの港湾管理業務を委託されているため、ド社がこれを受け継ぐことになる。このため米政府は、国土安全保障省国務省国防総省などからなる省庁間組織で検討した結果、今月「安全保障上の問題はない」と認可を出した。

 しかし、先週CNNなど一部メディアがこれを報じると、中東最大の乗り継ぎ空港であるドバイ空港をテロ実行犯らが使ったことや、「核の闇市場」の取引の多くがドバイ経由だったことなどを挙げ、ヒラリー・クリントン上院議員をはじめとする野党民主党だけでなく、共和党議員も懸念の声をあげ始めた。

 21日には共和党議会上下院のトップであるフリスト上院院内総務、ハスタート下院議長が次々と反対を表明した。

 ド社は、最高執行責任者(COO)は米国人で、上海、香港、釜山など、世界15カ国で港湾業務に従事している。

 英国企業に認められた業務がUAEの企業に認められなければ、アラブ世界への差別と解釈されかねない。UAEは対テロ戦・イラク戦争で米国に協力する友好国でもある。ブッシュ大統領は21日、「(買収を認めなければ)世界中に間違った信号を送る」と話した。

 米アラブ協会のクリスティーヌ・サーナゼル広報部長は朝日新聞に対し「過熱した反応ぶりに驚いており、懸念を感じる。中間選挙の年なので、『アラブ』という言葉がつけば何でも拒絶するのが流行なのだとしか思えない」と述べた。(朝日)