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■バグダッドの市場で車爆弾、21人死亡=イラク新内閣づくり進まず
◎【バグダッド21日】イラクのバグダッド南部地区のマーケットで21日夜、強力な自動車爆弾が爆発し、少なくとも21人が死亡、27人が負傷した。事件が起きたアブドシル市場はシーア派イスラム教徒とスンニ派が混住するドゥラ地区にあり、同市場は主としてシーア派が利用していた。ドゥラ地区では昨年、両派の抗争が多発していた。(写真はバグダッド中心部で起きた路傍爆弾事件の現場を調べるイラク警官)
事件は、イラク訪問中のストロー英外相が、暴力にさいなまれたイラクを再び結束させるため挙国一致内閣を樹立するよう呼び掛けている時に発生した。イラクでは、シーア派が勝利した昨年12月の総選挙から2カ月たっているが、新内閣はまだ成立していない。
イラクの人種、宗教各派は挙国一致内閣を結成すべきかどうか依然、議論を続けている。シーア派の指導者で現移行政権首相の座にあるジャファリ氏は21日、組閣はイラク国民が決めるべき内政問題だと主張し、米国や英国からの口出しに反対を表明した。〔AFP=時事〕
◎ イラク中部サーマッラにあるイスラム教シーア派のアスカリ廟(びょう)が22日朝、何者かに爆破された。シーア派のイマーム(指導者)2人の遺体がまつられた聖地で、同派は事態を重大視。最高権威のシスターニ師が1週間の服喪と抗議を呼びかけたほか、バグダッドなどでは怒った民衆が報復を叫んでおり、宗派対立がいっそう高まりそうだ。
サーマッラはバグダッドの北約125キロ。スンニ派が多いが、聖廟周辺ではシーア派が生活し、イランからも多数の巡礼者が訪れる。
アスカリ廟はイラクにあるシーア派の四大聖廟の一つ。同派が神聖視する12人のイマームのうち10代と11代がまつられ、世の終末で再臨すると信じられている第12代イマームのマフディが、最後に姿を隠した聖跡とされる。湾岸戦争後の民衆蜂起の際には中部カルバラにある四大聖廟の一つ、フセイン廟が旧フセイン政権に破壊された例はあるが、イラク戦争後は四大聖廟への攻撃はなかった。
ルバイエ国家安全保障顧問の説明によると、内務省特殊部隊の制服を着た男たちが現れ、警備の警官から武器を奪って手錠をかけ、火薬を仕掛けて爆破し、聖廟のドームが破壊された。死傷者はなかったという。
事件を受けてバグダッドやナジャフなどで民衆が街頭に繰り出し、「全スンニ派モスクの爆破を」などと呼びかけている。スンニ派のイラク・イスラム党幹部は、全土で29のスンニ派モスクが放火され、南部バスラでは同党支部が武装した男たちに包囲されている、と述べた。
現地では、シーア派を異端視するイスラム教厳格派のワッハーブ派の犯行との見方が強い。21日にも近郊のバラドで理髪店や女性の経営する美容院の連続爆破があり、あごひげをそったり女性が働いたりすることを「反イスラム」とみなす同派の仕業とみられていた。
またシーア派へのテロを続けるイラク・アルカイダ機構の可能性も指摘される。同機構はスンニ派が国民議会選挙への参加を決めた昨年末以降、他のスンニ派武装勢力から孤立し始めている。(朝日)