■「テロ称揚」は犯罪、英下院が再可決

【ロンドン=森千春】英下院は15日、「テロ称揚」を犯罪とする案を、賛成315票、反対277票で可決した。
 同案を柱の一つとする反テロ法制定を目指すブレア政権にとっては、大きな前進だ。

 同案によれば、テロをたたえ、新たなテロを引き起こしかねない発言は、犯罪として、7年以下の禁固刑か罰金が科せられる。

 昨年10月に、政府が国会に提出したが、「テロ称揚の定義があいまいで、言論の自由の制限につながりかねない」との批判が出た。野党の保守党、自由民主党は反対で、与党・労働党内部にも慎重論が根強かった。下院は昨年11月に可決したものの、上院が今年1月、否決した。下院は、再可決によって、法案成立への強い意志を改めて示した。

 英国では、上下院で意見が食い違う場合、下院が優先する。今回の例では、上院は、下院の決定を受け入れるか、独自の修正案を作成して下院との妥協を図ることになる。

 再可決の背景には、英国でいま、イスラム預言者ムハンマドの風刺漫画掲載への抗議で、公然とテロを予告するような言動が問題となっていることがある。

 ロンドン市内で、3、4の両日、イスラム教徒らが抗議デモを行った際、一部参加者は「イスラム教を侮辱する者の首を切れ」、「同時爆破テロは再び起きる」といったプラカードを掲げた。自爆犯を模した格好をした参加者までいて、市民の反発をかった。

 ブレア首相は15日、「こうした人々を取り締まり、彼らに『言論の自由の乱用は許されない』と教えることができる」と述べた。

 首相はまた、英国内に拠点をもち、テロを容認する過激派イスラム法学者らについて、「刑事訴追を受けるか、英国を去るかしなくてはならない」と厳しい姿勢を示した。