イスラエルのシャロン首相が自発呼吸を始める

シャロン首相、手足動かす 執務能力判断へ

◎【エルサレム9日共同】脳出血で重体が続くイスラエルシャロン首相を治療する病院の当局者は9日、麻酔の投与量を同日から徐々に減らし始めた結果、首相が自発呼吸を始め、痛み刺激に対して右手と右足を動かしたと述べた。ただし、まだ生命の危機を脱したとは言えないという。
 医師団は、言語能力などの判断には時期尚早と説明。今後さらに麻酔を減らし、人工的な昏睡(こんすい)状態を解いた後、脳損傷の程度を検査し検事総長に報告、司法当局が首相の執務能力を判断することになる。
 執務復帰が不可能と判断されれば、3月の総選挙を経て新首相が選出されるまでの暫定首相を閣議で決めるが、オルメルト首相代行の選出が有力視されている。


イスラエル シャロン後継「本命」不在 オルメルト氏/ペレス氏

オルメルト氏 カリスマ性欠き
ペレス氏 高まる注目度
 イスラエルシャロン首相の政界復帰が絶望視されるなか、「ポスト・シャロン」をめぐる報道が活発化してきた。三月二十八日投票予定の総選挙(定数一二〇)では、シャロン氏率いる新党カディマ(前進)の躍進が有力視されていただけに、次なる主役への関心は高い。“本命なき後継レース”の主な顔ぶれを紹介する。(佐藤貴生)
 シャロン氏の緊急手術を受け、五日に首相代行に就任したのがエフド・オルメルト首相代理(60)。シャロン氏の右腕として知られ、昨年十一月のカディマ結成時、最も早く右派リクードを離れて同氏と行動をともにした一人。リクード内部の強硬派に抗して、ガザ撤退を主張するシャロン氏を早くから支持した。
 一九七三年、二十八歳で国会議員に初当選。九三年から十年にわたり首都エルサレムの市長を務めるなど豊富な政治経験を誇るが、カリスマ性に欠け、総選挙までの急場しのぎに過ぎない−との見方もある。
 そのオルメルト氏の長年の政敵が、ベンヤミン・ネタニヤフ元首相(56)。昨年十二月中旬の党首選挙でリクード党首に返り咲いた。国内世論の右傾化に再び拍車がかかった場合、影響力を増すとの観測もある。対パレスチナ強硬派の代表格で、ガザ撤退をめぐってシャロン氏と真っ向から対立、撤退開始直前の昨年八月初め、抗議のため財務相を辞任した。鋭い弁舌が右寄りの国民の支持を集める半面、批判の対象ともなってきた。
 ノーベル平和賞受賞者で、労働党を離れ、カディマ支持に回ったシモン・ペレス元首相(82)への注目度も高まっている。シャロン氏の後を継いでカディマの党首に就任しても、同氏と変わらぬ支持が得られるという世論調査結果もある。政治家としては比類なきキャリアを誇る一方、シャロン氏ほどの人気はなく、今回の転身でも「日和見主義」との批判が出た。
 シャロン氏側近の中で最高位のポストを占める女性がツィピ・リブニ法相(47)。リクードに所属し、情報機関モサドの弁護士も務めたが、ユダヤ人の人口的な優位性を保つため、占領地の一部をパレスチナ側に引き渡すことを認める現実的な側面も持つ。強固な政治基盤に欠けるとの指摘もある。
 リクードからカディマに移った有力者にはシャウル・モファズ国防相(57)もいる。パレスチナ住民の反イスラエル闘争(インティファーダ)に空爆や住宅破壊といった強硬姿勢で臨んだ。ほかにも対パレスチナ穏健派で総選挙に向けて党勢維持の重責を担うアミール・ペレツ労働党党首(53)らの名前が挙がっている。(産経)


■呼び掛けに脳波計が反応 シャロン首相、音楽にも

◎【エルサレム10日共同】イスラエルの民間テレビ、チャンネル2は9日、脳出血で重体が続くシャロン同国首相周辺の話として、呼び掛けに対し首相の脳波計が反応を示したと伝えた。
 医師団が、意識の回復を図る過程の検査を実施。首相の好きなクラシック音楽にも同様の反応を示したという。だが、医師団は9日の会見で、まだ生命の危機を脱したとは言えないとしている。
 医師団が同日、麻酔の投与量を徐々に減らし始めた結果、首相は自発呼吸を始め、痛み刺激に対して右手と右足を動かした。


脳出血は処方薬原因か 首相重体でイスラエル

◎【エルサレム10日共同】10日のイスラエル紙ハーレツ(電子版)は、重体が続くシャロン首相(77)が昨年12月18日に軽い脳卒中で入院後、投与を避けるべき薬を病院で処方され、それが今回の脳出血につながった可能性があると報じた。首相の治療に当たる医師の話として伝えた。
 一方、首相が入院している病院の当局者は、首相が痛み刺激に対し、9日の右手足に続いて10日には左手足も動かしたことを明らかにした。
 同紙によると、首相は脳の血管の病気にかかっており、血液の抗凝固剤を投与すると脳出血の危険性が非常に高まる。しかし、この病気に罹患(りかん)していることは昨年12月の入院時には分からず、同剤を処方。今回の入院後に実施したCTスキャンによる頭部検査で病気が判明したという。
 AP通信によると、首相は10日朝も人為的な昏睡(こんすい)状態が続いており、深刻な状態に変わりはない。病院は同日の声明で、意識を回復させるため医師団が今後も麻酔の投与量を徐々に減らし、首相の反応を調べる作業を続けると明らかにした。