イスラエルのシャロン首相は重い脳卒中
◎[エルサレム 4日 ロイター] イスラエルのシャロン首相(77)は4日、重い脳卒中で病院に急送されたが、政府高官筋は同日、首相は脳の出血から回復しない可能性があると語った。
シャロン首相はイスラエルの政治の中心人物で、3月に行われる総選挙では再選を勝ち取ると広く予想されていた。
政府関係者が当地の病院の外で記者団に語ったところによれば、同首相の職務権限は一時的にオルメルト首相代理兼通産相に引き継がれた。
病院の医師はシャロン首相の容体について「診断は重い脳卒中。首相は麻酔を施され、人工呼吸器をつけている」と語った。
同医師によると、シャロン首相は脳から出血しており、直ちに出血を止めるための緊急手術を受けるという。
政府高官筋は「非常に悪いようだ。首相が回復するかどうか分からない」と述べた。
シャロン首相は危篤状態、手術はさらに数時間要する=医師
◎[エルサレム 5日 ロイター] 脳内出血を起こして入院したイスラエルのシャロン首相について、医師は5日、シャロン氏が危篤状態にあり、出血を止めるための手術はさらに数時間かかる公算であることを明らかにした。
シャロン氏が入院しているエルサレムの病院の関係者は、手術が6時間目に入った段階で記者団に対し「手術はさらに数時間を要する、と予想している。首相の容体に変化はなく、人工呼吸器を付けられている」と述べた。
シャロン首相 緊急手術
◎重い脳卒中、容体深刻
【カイロ=加納洋人】イスラエルのシャロン首相(77)が四日夜(日本時間五日未明)、同国南部の自宅で胸の痛みを訴え、エルサレムの病院に入院した。イスラエル紙ハアレツ(電子版)などが伝えた。首相は脳出血を伴う重い脳卒中と診断された。全身麻酔を施され、人工呼吸器をつけ、医師団が緊急手術を行った。深刻な容体で、イスラエル放送は、首相の回復の可能性は低いと伝えた。復帰が困難となれば、中東和平への影響も懸念される。
首相権限がオルメルト首相代行に委譲され、オルメルト氏は五日午前九時(日本時間同日午後四時)に閣議を開催する。
首相は昨年十二月十八日にも軽い脳卒中で入院したばかりで、五日にはその治療の一環で心臓のカテーテル治療を受ける予定だった。今回は脳内で大量出血しており、イスラエルのテレビは下半身はまひし、生命にかかわる状態だと伝えた。
首相は昨年十一月に自身が率いる右派政党リクードを離党し、新党カディマを結成した。最近の世論調査では、カディマはリクードや中道左派政党労働党を抑え、第一党となる勢いをみせていた。
三月末には総選挙が予定されており、首相の容体が悪化したことで、総選挙をはじめ、中東和平交渉の行方にも大きな影響を与えるのは必至の情勢となった。
≪小泉首相訪問 中止も検討≫
安倍晋三官房長官は五日午前の記者会見で、イスラエルのシャロン首相の緊急入院を受け、小泉純一郎首相の七日からの中東訪問で予定しているシャロン氏との会談について「病院に運ばれ手術を受けているという状況を勘案すれば非常に難しい」と述べ、日程全体を再検討する考えを示した。
小泉首相は記者団に「シャロン首相の容体をみて判断したい」と述べた。政府筋は同日、「シャロン首相に会えないのならイスラエルに行く意味はない」と述べ、訪問中止も検討していることを明らかにした。
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【プロフィル】アリエル・シャロン
アリエル・シャロン 1928年2月、イスラエル中部生まれ。56、67、73年の中東戦争に従軍。さらに82年、国防相としてレバノン侵攻を指揮、多くの戦争にかかわったことから「戦争屋」の異名も。90年、住宅建設相を務め、ユダヤ人入植地の拡大を推進するなど対パレスチナ強硬派の急先鋒(せんぽう)だったが、昨年秋にガザ地区撤退を主導し、和平への積極姿勢をみせていた。(産経)