核ミサイルも開発か

■「核ミサイルも開発」 欧情報機関

◎【ロンドン=蔭山実】イランが核兵器の製造に必要な材料をそろえ、核弾頭搭載可能なミサイルを開発しているとする報告書を欧州四カ国の情報機関が昨年七月にまとめていたと、四日付の英紙ガーディアンが伝えた。この報告書は欧州各国の閣僚にイランの核開発状況を説明するためにつくられたとされる。イランが核兵器製造につながるウラン濃縮の再開を表明しただけに波紋を広げそうだ。
 報告書は五十五ページにわたり、英国とフランス、ドイツ、ベルギーの情報機関が作成。イランは西欧と旧ソ連圏で企業や官民の研究機関、仲介人からなる広範なネットワークを構築し、核開発からミサイル製造、生物化学兵器まで、機器や技術を入手しようとしていると警告している。
 とくに「イランは徹底して軍事応用技術を取得し続けている」と指摘し、国防省の傘下で暗躍している計二百以上のイランの企業や研究機関を列記。一方で、軍事機器の輸出が国家収入になっている北朝鮮から、イランも技術や機器で恩恵を受けているとも主張した。
 そのうえで、イランは欧州を射程に入れた核弾頭搭載可能な弾道ミサイルの部品を購入し、宇宙開発を隠れみのに中距離弾道ミサイルシャハブ3」の射程延長に取り組んでいると強調。イランの科学者らはミサイルの風洞実験施設の建設や誘導技術などの開発に着手したと分析している。
 報告書は、イラン以外にもシリアがミサイル開発やウラン濃縮に必要な技術や物質を入手していると述べている。


■大統領 核開発再開を言明 IAEAに通告「後戻りしない」

◎イランの核開発をめぐる緊張が高まっている。同国のアフマディネジャド大統領は欧米各国の警告にもかかわらず、核開発の続行を言明。目的は「平和利用」と説明するが、イランが核弾道ミサイル技術の極秘取得に動いている疑惑も浮上した。核の軍事転用を危惧(きぐ)する米国は新たな制裁措置も視野に、イランに対する強硬姿勢を示唆するなど、北朝鮮だけでなく、イランの核問題も瀬戸際にさしかかりつつある。
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 【カイロ=加納洋人】イランのアフマディネジャド大統領は三日、停止中の核燃料技術に関する研究活動について、「わが国は忍耐と英知と計画性を持って、核エネルギー開発の道を進む」と発言、核研究について「後戻りはしない」と不退転の決意を示した。フランス通信(AFP)などが伝えた。
 アフマディネジャド大統領は三日、国会での予算審議後、「(IAEAの)エルバラダイ事務局長あての文書で、われわれは核技術を研究する意向を伝えた」と述べたうえで、核研究は「後戻りしない」として、不退転の決意で研究開発を進める意向を示した。
 さらに、大統領は「(西側諸国は)非常に頑強で、われわれが妥協すれば、西側諸国はイランの大学など全研究機関の閉鎖を要求してくるだろう」と発言。「国益の基礎を西側の政策に置くことはできない」と強硬姿勢を示した。
 イラン政府は三日、国際原子力機関IAEA)に提出した文書で、「自主的に停止した平和目的の原子力エネルギーのプログラムに関する研究開発活動を、九日に再開することを決定した」と明言。再開する研究の具体的内容は明らかでないが、イラン国営テレビで原子力庁のサイディ次官は「(研究再開は)核燃料製造とは関係がない」と述べた。ただウラン濃縮の小規模実験などが含まれる可能性もある。
 イランは英仏独との核交渉の過程で、ウラン濃縮の前段階にあたる転換作業だけでなく、国内でのウラン濃縮も要求している。現在、イラン国内での転換作業を認める一方、濃縮はロシアで行う「ロシア案」が検討されており、イラン外務省は三日、ロシア代表団が七日にテヘラン入りし、同案について協議すると発表した。(産経)