内閣承認手続き 原理主義はNO?、女性議員の動向がカギ


■内閣承認手続き 原理主義はNO?、女性議員の動向がカギ


◎【バンコク=岩田智雄】三十二年ぶりに国会の上下両院議会が開会したアフガニスタンで、間もなく下院による内閣承認手続きが行われる。閣僚の承認には、下院(定数二四九)の過半数の賛成が必要で、特に下院の四分の一以上を占める女性議員の動向が注目されている。
 アフガンでは、十二月十九日に両院が招集され、二十一日に両院議長の選出が行われた。下院議長選では、カルザイ大統領が推す多数民族パシュトゥン人のサヤフ氏が、小差で少数民族タジク人のカヌニ前教育相に敗れる波乱が起きた。
 下院議長選の結果を大きく左右したのは女性議員票だった。サヤフ氏はソ連軍とのゲリラ戦を戦ったムジャヒディン(イスラム聖戦士)の元指導者で、カヌニ氏もタリバン政権との内戦を繰り広げた少数民族グループ北部同盟の元指導者だが、特にサヤフ氏は女性に差別的なイスラム原理主義的性格が強いことが女性議員に嫌われた。
 現地の外交筋によると、下院の女性議員六十八人の多くは改革派のカルザイ大統領を支持しているが、このうち六十人以上がサヤフ氏の対抗馬であるカヌニ氏に投票。大統領への支持が必ずしも人事への賛同を意味しないことを見せ付けた。
 閣僚の承認はカルザイ大統領が任命した一人ひとりに対して審議されるが、これまで権利を抑圧されてきた女性の議員は、イスラム原理主義的な人物には「ノー」を突き付ける可能性もある。
 さらに、閣僚の二重国籍問題が再び浮上することも予想される。現閣僚には、内戦中に欧米諸国に亡命しており、特にパシュトゥン人に二重国籍を持つ人物が少なくないとされる。憲法は閣僚の二重国籍を原則として認めていないが、議会の同意が得られれば可能だと定めている。
 カヌニ氏ら少数民族指導者はこれまで、再三閣僚の二重国籍問題を引き合いに出してパシュトゥン人勢力に揺さぶりをかけてきた。二〇〇四年十二月に現内閣が発足した際も、大統領報道官は、いったんは二重国籍を持つ閣僚は外国籍を放棄することになると述べたが、結局この問題は立ち消えとなった。一部の閣僚は二重国籍を維持したままとなっていて、今回の承認手続きの火種として残っている。
 現地の外交筋によると、カルザイ大統領は政府の業務の効率化などのため、現在二十六ある省を十七、八省に統合することを計画。閣僚の人選については、議会の承認を得るため、水面下で政治的駆け引きがすでに行われているとみられる。
 タリバン政権崩壊後のアフガンの和平と復興の道筋を定めたボン合意は国会の開会で区切りがついた。今後はポスト・ボン合意をどう図るかが課題で、今月三十一日から二日間、ロンドンで支援国会合が予定されている。カルザイ大統領としては新生アフガンの始動をアピールして国際社会の理解を得たい考えだが、そのためには新内閣を混乱なく発足できるかどうかが試金石となっているといえそうだ。(産経)