アッバス議長 パレスチナ評議会選延期に言及


アッバス議長 パレスチナ評議会選延期に言及 東エルサレムが焦点


◎【カイロ=加納洋人】二十五日に投票予定のパレスチナ評議会(自治政府の議会)の選挙戦が三日、ヨルダン川西岸とガザ地区で始まった。しかし、自治政府アッバス議長は二日、イスラエルが東エルサレムでのパレスチナ人の投票を認めなければ、選挙の延期もあり得ると発言。同議長の支持母体であるパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハ内からも選挙延期を求める声が高まっている。
 中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、アッバス議長は訪問先のカタールで二日、「もし、エルサレムが選挙区に含まれなければ、パレスチナ各派は選挙を実施しないことで一致している」と述べた。同議長が選挙延期について言及したのは初めて。
 これに先立ち、ファタハは一日、西岸ラマラで緊急中央委員会を開き、ガザ地区の治安悪化や東エルサレムでの投票が認められないことを理由に、選挙の延期を議論しており、ファタハ内では選挙延期に向けた動きが高まっていた。
 一方、評議会選挙に初参加し、躍進が予想されるイスラム原理主義組織ハマスガザ地区幹部は二日、「選挙を遅らせる各派の合意はない」と反発。選挙を延期することは許されないとの立場を示した。
 ファタハは今回の候補者選定の過程で、アッバス議長らアラファト時代を支えた旧世代と、イスラエルの獄中にあるマルワン・バルグーティ氏らの若手世代との世代間対立が表面化し、旧世代を中心に、選挙を延期して態勢を立て直した方が有利だとの考えが強まっている。
 イスラエルは、ハマス武装解除しないまま政治参加することを非難しており、一九六七年の第三次中東戦争で占領した東エルサレムでのパレスチナ人の投票を認めない方針だ。
 しかし、米国など国際社会が、予定通りの選挙実施を求めていることから、イスラエルが選挙延期の原因をつくったとの非難を避けるため、東エルサレムでの投票に関し、何らかの譲歩案を打ち出す可能性がある。
 自治政府は、東エルサレムを将来のパレスチナ国家の首都と位置づけている。それだけに、同地での投票は譲れない立場だ。(産経)