アサド大統領自ら、ハリリ元首相を脅迫か(再)


■シリア元副大統領「大統領、事件前に脅迫」 レバノン元首相暗殺で証言


◎【カイロ=加納洋人】シリアのハッダーム元副大統領(73)は三十日に放送された中東の衛星テレビ局アルアラビーヤとの会見で、シリアのアサド大統領が、二月に暗殺されたレバノンのハリリ元首相を暗殺前に脅迫していたと証言した。さらに、「シリアの治安機関が単独でこのような作戦(ハリリ氏暗殺)を実行できない」と述べ、大統領の関与を示唆した。シリアの政権中枢にいた人物が証言したことで、今後、真相解明を求める声が一段と強まるのは必至だ。
 ハッダーム氏は、アサド大統領の父親のハフェズ・アサド前大統領時代の一九八四年から二〇〇五年六月まで副大統領を務め、現在はパリ在住。インタビューにはパリから答えた。
 同氏によると、アサド大統領がハリリ元首相を脅迫したのは、暗殺事件の数カ月前にシリアの首都ダマスカスで行われた会談の際で、同大統領はハリリ氏に対し、「私はわれわれの決定を妨げようとする者を誰でもたたきつぶす」などと強い言葉で脅したという。
 さらに、同氏は「ハリリ氏はシリアから多くの脅迫を受けていた。深刻なことも言われていた」「私はハリリ氏にレバノンを離れるよう助言した」などと述べた。
 ハッダーム氏は元首相暗殺事件の詳細については語らなかったが、国連の独立調査委員会が提出したレバノンとシリアの治安当局が事件に関与した疑いを示す内容の報告書を評価したうえで、「真相は、(国連の)最終報告を待たねばならない」と述べた。
 また、同氏はアサド政権が腐敗し、改革に失敗しただけでなく、対レバノン政策など同政権の外交政策も間違いだったと痛烈に批判した。
 シリアは〇五年六月、五年ぶりにバース党党大会を開き、アサド大統領は政治・経済改革や腐敗に取り組み、古い党体質から脱却して人事を一新することを表明した。その際、古参のハッダーム氏は副大統領を辞任しており、同氏のアサド大統領批判の背景には、シリア政権内部での権力闘争があるものとみられる。(産経)