アチェ州の独立紛争終結


■大統領、情報機関の報告受け身辺警護強化へ


◎[バンダ・アチェインドネシア) 26日 ロイター] インドネシアのユドヨノ大統領は、自らの安全が脅かされているとの情報を受け、身辺警護を強化する方針を決めた。スポークスマンが明らかにした。
 同国では、これまでにも過激派による攻撃で死傷者が出ており、大統領は一般市民との直接の交流や握手を制限する。
 スポークスマンは「大統領は、情報機関から特定の組織が大統領と家族の安全を脅かそうとしているとの信頼できる情報を得た。これを受けて警備隊は、大統領と市民の身体的な接触を規制するなど一定の措置を講じた」と述べた。
 ただ同スポークスマンは、その組織の詳細には触れなかった。




アチェ州の独立派組織、軍事部隊解散を宣言


◎【バンダアチェインドネシアアチェ州)岩崎日出雄】インド洋大津波の被災地、アチェ州の独立紛争をめぐる和平協定に基づき、独立派武装組織「自由アチェ運動(GAM)」が27日、軍事部隊の解散を宣言した。GAMは同日までにライフル銃など840点の武器引き渡しを完了した。政府側も国軍1万4700人と警察部隊9100人を残し、軍事作戦のための増派分(計約3万2000人)の撤退を今月中に完了する予定だ。今後はアチェの統治に関する新法(アチェ行政法)の内容など協定の政治条項を政府がいかに履行するかが焦点になる。
 和平監視団員として派遣されたイルワンディ・ユスフ氏らGAM幹部は同日、バンダアチェの仮事務所前で記者会見し、軍事部門の解散を宣言した後、「アチェ移行委員会を設立して兵士の受け皿とし、彼らの行状を監督する」と述べた。GAMのムザキル・マナフ司令官は姿を見せなかったが、「GAM部隊は文民社会に復帰する移行期に入った」とする署名入り広報文を発表した。
 インドネシア政府とGAMが今年8月にヘルシンキで調印した和平協定は、アチェの統治やGAM出身者の社会復帰などについて規定。これに基づき、政府は現行のアチェ特別自治法に代えて06年3月までにアチェ行政法を制定し、07年2月までにアチェでの地方政党設立を可能にする制度を整備する。
 政府は「アチェの地方政府に関する法律(アチェ行政法)」の草案作りを進めているが、10月に判明した政府原案で、アチェの首長資格を「外国籍を取得したことがない者」と規定していることが判明。GAMは、スウェーデンに亡命しているGAM幹部の立候補を阻む狙いがあるとみて反発している。
 石油など資源が豊富な同州では、76年にGAMが独立を宣言後、武力紛争が続いた。両者は02年12月に和平協定を結んだが間もなく破たん。翌年5月、政府が軍事非常事態宣言(戒厳令)を発令し、軍事作戦を始めた。だが昨年末の大津波で同州の死者・行方不明者が計約16万7000人に達し、これが紛争終結の契機となった。
 ◇武力闘争再開は否定…GAM幹部
 GAM幹部のイルワンディ・ユスフ氏(45)は毎日新聞と会見し「アチェ行政法や地方政党に関する制度が不十分な場合は協定違反を指摘する。その場合、アチェ人民は再び独立を宣言する権利がある」とインドネシア政府をけん制した。ただ「二度と武器は取らず、住民が連日、独立を要求し、国際社会にも働きかける」と述べ、武力闘争再開は否定した。
 同氏は「今後は協定の政治条項の履行が焦点」だとして「政府が協定に沿ってこれらを実施すれば、恒久和平への一里塚になる」と語った。
 協定では、GAM構成員の社会復帰のため政府が経済支援を行うことになっているが、GAMは支援受給者(GAM構成員)の名簿をまだ提出していない。この点について同氏は「アチェ行政法の最終草案が示され、内容に納得するまで名簿は提出できない。外国籍取得経験者を首長不適格者とする政府原案はGAM指導者の立候補を妨げるのが狙いだ」と政府への警戒感を示した。一方、同法が適切であれば「スウェーデン亡命中のGAM最高幹部らがアチェに戻る」ものの首長選挙には立候補しないと表明、「アチェのために働く人ならGAM構成員でなくてもいい」と述べた。
 イルワンディ氏は元国立大講師。GAMの外交活動を担ったが03年に逮捕され、国家転覆罪で禁固9年の判決を受けた。【バンダアチェ岩崎日出雄】(毎日)