人道支援の不正企業2200社が明らかに


■<イラク支援不正疑惑>2200社がリベート 国連報告書


◎【ニューヨーク高橋弘司】国連のイラク人道支援事業「石油と食料の交換プログラム」にからむ不正疑惑を調べている国連の独立調査委員会(委員長・ボルカー前米連邦準備制度理事会議長)は27日、最終報告書を発表した。委託契約企業の約半分にあたる2200社以上が旧フセインイラク政権にリベートや水増しなどの方法で不正利益を与えていたと指摘した。発表によると、「不正支払い企業」リストには日本企業とみられる医薬品会社「ニッポン・カヤク」の名前が挙げられている。
 発表によると、リベートや水増しを行っていた企業は66社前後にのぼり、報告書は国連安保理や事務局は事業開始後、不正に気付きながら適切な対策を取らず、放置していたと批判している。昨年4月以来の調査では、同事業の総括責任者だったセバン元国連事務次長(すでに退職)が約15万ドル(約1725万円)のリベートを得たことなどが判明しており、抜本的な国連改革を求める声が高まりそうだ。
 発表では、イラク人道支援事業の契約企業約4500社のうち2200社以上がさまざまな方法で旧フセイン政権にリベートや水増しなどで不正な支払いを行っていたとしている。この不正支払いを受け、旧フセイン政権はロシア、フランス、中国など安保理常任理事国に拠点を置く商社、製造会社、食品会社などを優先し、契約を締結していたと指摘している。
 報告書は「ニッポン・カヤク」とされる会社が旧フセイン政権との間で抗がん剤など医薬品にかかわる16の契約を結んでいたと指摘している。(毎日)




■支援不正疑惑、名指し日本企業は「日本化薬


◎【ニューヨーク高橋弘司】イラク人道支援事業「石油と食料の交換プログラム」にからむ不正疑惑を調べている国連の独立調査委員会(委員長・ボルカー前米連邦準備制度理事会議長)が発表した最終報告書で、「不正支払い企業」と指摘された「ニッポン・カヤク」が東証1部上場の医薬品会社・日本化薬(本社・東京)だったことが28日、明らかになった。
 同社は「イラク厚生省傘下の輸入公団に抗がん剤を輸出した取引があった」と認めたが、関係当局の許可を得た人道的な観点からのもので、「不正取引には一切関係していない」と潔白を強調している。

 調査委は、同事業の契約を締結した日本企業13社のうち「ニッポン・カヤク」だけについて「人道支援関連物資に関する不正支払い」リストに挙げ、「総額約32万5000ドル(約3700万円)相当のリベートが支払われた」と指摘している。
 同委は「不正支払い企業」2200社以上に照会文書を送付したとしているが、報告書は同社について「返答がない」と記していた。これに対し、同社側は28日、「過去に調査委からの連絡はなかった」と反論している。
 報告書はまた、仏元国連大使や英国の現職下院議員などが旧フセイン政権から石油割り当てなどの形で「利益」を得ていた疑いも指摘しており、捜査権限を持たないことを踏まえ、ボルカー委員長は各国関係当局の捜査に協力する用意を表明した。

 ▽「日本化薬」(本社・東京都千代田区)は28日、国連の独立調査委員会が最終報告書で指摘した日本企業が自社であることを認めた。同社広報部によると、イラク厚生省傘下の輸入公団に抗がん剤を輸出した取引があったという。しかし、「日本の官庁の許可も受け、不正取引には関与していない。取引した抗がん剤は世界的に提供メーカーも少なく、人道的観点からも取引した」とコメントしている。




■国連イラク人道支援で2200社以上が旧政権に不正支払い=報告


◎[国連 27日 ロイター] 国連のイラク人道支援事業「石油・食料交換プログラム」にからむ不正疑惑を調べている国連の独立調査委員会は27日、2200社以上の企業が旧フセイン政権に総額18億ドルもの不正な支払いを行っていた、とする報告書を発表した。不正支払いをしていた企業には、ダイムラークライスラー シーメンスボルボ など大手企業が含まれるという。
 同委員会はボルカー前米連邦準備理事会(FRB)議長が委員長を務めている。今回発表された報告書のなかでは、当時国連の制裁解除を目指していたフセイン元大統領から有利な扱いを受けていたとして、ロシアやフランス、英国、イタリアなどの政治家の氏名も公表されている。
 「石油・食料交換プログラム」は1996年12月に始まり、2003年に終了した。イラククウェート侵攻を受けて国連は1990年にイラクに制裁を科したが、同プログラムにより、イラクは食料や医薬品など民生品を購入するために限り石油を輸出することが可能になった。
 同報告書によると、このプログラムの下でイラクは合計642億ドルの石油を248社に売ったが、うち139社が割増金を支払っていた。また、3614社がイラクに345億ドルの民生品を売ったが、2253社がリベートを渡した。イラクは計18億ドルの利益を得たという。




■ロシア企業の受注が最大 イラク石油疑惑、大物暗躍


◎【ニューヨーク27日共同】イラクの旧フセイン政権への国連人道支援事業「石油・食料交換計画」を通じたイラク原油の販売契約のうち、ロシア企業が最大の約3割を受注、契約獲得をめぐって極右政党、自由民主党党首のジリノフスキー・ロシア下院副議長らが暗躍していたことが27日分かった。
 事業をめぐる不正事件を調べていた国連独立調査委員会(ボルカー委員長)の最終報告書が指摘した。ロシアは国連の対イラク経済制裁解除に前向きだったが、イラク側がこうした国に優先的に販売枠を割り当てていた実態が裏付けられた。




■「国連の腐敗とずさんな監査体制」浮き彫り


◎【ニューヨーク高橋弘司】イラク人道支援事業「石油と食料の交換プログラム」の不正疑惑をめぐる国連の独立調査委員会(委員長・ボルカー前米連邦準備制度理事会議長)の調査が27日、終結した。
 1年半にわたる調査で浮き彫りになったのは、想像を超える「国連の腐敗とずさんな監査体制」だった。同プログラムを悪用する形で、国連経済制裁下、「旧フセイン政権が“延命”」した事実も露呈した。

 今回の報告書で、新たに英国のギャロウェー下院議員が「1800万バレル分以上の石油割り当てを受け、数百万ドルの水増し利益を得た」と指摘された。
 またフランスのメリミー元国連大使(91〜95年)が「200万バレルの石油割り当てを受け、販売手数料として約16万5000ドル(約1900万円)を得た」とされたほか、ロシアの極右政治家ジリノフスキー氏が「7300万バレルの石油割り当てを受け、うち6200万バレル分の処分で水増し利益を得た」との指摘もあった。

 ギャロウェー議員は今年5月、米上院小委員会で疑惑を全面否定、ジリノフスキー氏も関与を否定しているが、メリミー元大使は今月12日に仏捜査当局に拘束され、取り調べを受けている。

 いずれも「経済制裁反対や制裁早期解除に動いた」とされる人物ばかりで、今回の報告書は、アジズ・イラク元副首相が中心となり、「石油割り当て」という“武器”を利用し、66カ国2200以上の企業から18億ドル(約2070億円)の不当利益を得たからくりも白日の下にさらした。

 計5回の報告で、アナン事務総長の長男が同事業の契約企業から不透明な報酬を得ていた事実が発覚し、アナン氏が同企業の契約に便宜を図ったとの疑惑もあったが、シロの判定が下った。
 一方で、同事業の総括責任者だったセバン元事務次長(すでに退職)が15万ドル(約1725万円)のリベートを得るなど腐敗が国連中枢に及んでいたことが判明した。
 調査委が指摘した一連の疑惑は今後、米国はじめ各国捜査当局の手に委ねられる。ボルカー氏は27日、アナン事務総長に書簡を送り、疑惑によって「国連は弱体化した」と指摘、改革が急務だと訴えた。(毎日)




■連邦制反対 スンニ派3党が連合 国民議会選参加へ


◎【カイロ=加納洋人】イラクイスラムスンニ派三政党は二十六日、十二月十五日に実施される国民議会選挙に参加するため、連合会派「イラク合意戦線」を組織すると発表した。
 スンニ派勢力の大半は一月末の同議会選挙をボイコットしたが、先に行われた新憲法草案の是非を問う国民投票には反対票を投じる形で参加しており、連邦制導入に反対するスンニ派は今後、新憲法の改正を目指す動きを強めていくとみられる。

 連合会派を形成するのは草案賛成に回った「イラクイスラム党」と、草案に反対した「イラク国民対話評議会」「イラク民衆会合」。
 三党のスンニ派社会への影響力はまだ極めて限定的だが、十二月の国民議会(定数二七五)選挙で、二百三十人程度の統一候補者リストを作成し参加するという。
 イラクイスラム党の幹部は「次期議会はイラクの将来を築くうえで極めて重要だ」と述べ、議会内での発言力確保を目指す方針を示した。
 三党は、国民投票直前にシーア派クルド人勢力との間で成立した十二月の選挙後、四カ月以内に新憲法を見直すとした合意に基づき、連邦制の修正などを求めてゆく方針だ。
 一方、同派のイスラム教法学者団体「イラクムスリムウラマー協会」のクベイシ師は二十六日、「われわれは占領下での政治プロセスを認めない」として新憲法の破棄を強く訴えた。

 また、シーア派の反米指導者サドル師の側近は同日、スンニ派地域の中西部のアンバル県でスンニ派と共闘を組み、次期選挙の候補者リストを作成する方針を示した。サドル師は「連邦制はイラクを分裂させる」として連邦制に反対している。

 こうした中、イラクの民族・宗派間対立の先鋭化を回避しようと国際的な動きも始まっている。アラブ連盟のムーサ事務局長が二十日、旧政権崩壊後、初めてイラク入りし、同国のシーア派最高権威シスターニ師や移行政府の幹部らと会談。十一月十五日にカイロで各民族・宗派の政治家が出席した「国民和解会議」を開くことを提案し、各派の出席を要請した。(産経)




■最大規模16万1千人に イラク国民投票で米軍


◎【ワシントン27日共同】イラク駐留米軍の規模が、今月中旬に行われた新憲法案の国民投票に合わせて、約16万1000人となり、2003年3月にイラク戦争が始まって以来、最大規模に膨れ上がっていることが分かった。ロイター通信が27日伝えた。
 駐留米軍は通常、約13万8000人程度とみられ、2万人以上増強したことになる。反米武装勢力を抑え込んで、政治日程を予定通り進め、早期撤退につなげたいブッシュ政権の思惑の表れといえそうだ。
 米国防総省のディリタ報道官は記者団に対し、駐留米軍は近く大幅に削減されると予測。しかし、正統政府樹立に向けた12月15日の総選挙前には再び現在の規模に戻るとの見通しを示した。




イラク選挙戦、本格化へ 立候補届け出を締め切り


◎【カイロ28日共同】12月15日に実施されるイラク総選挙で、選挙管理委員会は28日、立候補の届け出を締め切る。各政党や選挙連合は同日中に候補者名簿を提出。イラク人による正統な新政府での勢力確保をかけた選挙戦は、11月上旬に本格化する。
 総選挙では、連邦議会(定数275)のうち、全国に18ある州ごとの比例代表で230議席、全国区の比例代表で45議席を選出。連邦議会は大統領を選び、議会の多数派指導者が首相に就任する。
 イスラムシーア派スンニ派クルド人の各勢力は、支持拡大のためぎりぎりまで政党間の選挙連合協議を継続。各派の候補者名簿は29日に発表の見通し。