シリアへの圧力を高める米仏英、慎重な中露


■シリアから武器流入 国連総長安保理に報告


◎【ニューヨーク26日共同】アナン国連事務総長は26日、シリア軍が4月にレバノンから撤退した後も「シリアからの武器や要員の流入が増え、レバノンの一部武装組織に渡っている」とする報告書を安全保障理事会に提出した。
 米英両国とフランスは25日、2月のハリリ元レバノン首相暗殺事件の国連独立調査委員会の追加調査に全面協力するようシリアに要求、応じない場合は経済制裁も辞さないとの安保理決議案を提示しており、報告書でシリアへの圧力がさらに強まった。
 報告書は、レバノンからの外国軍撤退やレバノン国内の武装民兵組織解体などを求めた昨年9月の国連安保理決議の履行状況を定期的に点検するため、ラーセン国連特使がまとめた。




レバノン元首相爆殺調査 シリアに協力要求 米英仏決議案、経済制裁も検討


◎【ニューヨーク=長戸雅子】レバノンのハリリ元首相爆殺事件で国連の独立調査委員会(メーリス委員長)がシリアが関与したとの調査結果を安全保障理事会に報告したのを受け、米、英、仏の三カ国は二十五日、シリアに対し調査への全面協力を求める決議案を安保理各国に提示した。決議案は、協力に応じなければ経済制裁などを含む「さらなる措置」を検討すると明記し、シリアへの圧力を強めている。シリアも、安保理の制裁措置にもともと消極的なロシアや中国と相次いで電話協議して対応策を検討しており、採択までにはなお曲折がありそうだ。
 決議案は各国に対しても、事件の容疑者の入国拒否(海外渡航禁止)や金融資産凍結といった措置を取るよう求めた。
 シリアには容疑者の身柄を拘束し調査も国外かシリア当局者が立ち会わない形で行うなど例示して、全面協力を要求。
 決議案はこのほか、あらゆる形のテロへの支援停止も求めており、「テロ支援国家」と指定するシリアに強硬姿勢を取るブッシュ米政権の政策を色濃く反映している。
 外交筋は「渡航禁止はともかく、資産凍結措置が調査の進展にどの程度影響するのか。『そこまで必要か』と安保理メンバー国から疑問が出るかもしれない」と指摘しており、国連憲章第四十一条に基づいて経済制裁措置をちらつかせることにロシアや中国などが反発を見せる可能性もある。
 現安保理メンバー中唯一のアラブ国家、アルジェリアのバーリ国連大使は同日、「調査はまだ終わっておらず、今はどんな形の行動も措置も取る時期ではない」と、米国などを牽制(けんせい)している。
 シリアのアサド大統領は二十五日、ロシアのプーチン大統領と電話協議し、同国大統領府は両大統領が「中東に新たな緊張が生まれないよう国際社会は慎重に行動すべきだ」との認識で一致したと発表した。ラブロフ同国外相も中国の李肇星外相に電話し、安保理の審議で意見交換をした。
 米国は、三十一日開催を目指して調整中の安保理閣僚級会合で採決に持ち込みたい考えだが、安保理筋は「議論が長引く可能性もあり、難しい状況だ」と予測している。(産経)




■シリア発、武器流入警告 レバノン国連報告「難民キャンプ拠点」


◎【ニューヨーク=長戸雅子】国連のアナン事務総長は二十六日、レバノンからの外国軍撤退などに関するラーセン国連特使(中東問題担当)の報告書を安全保障理事会に提出した。昨年九月の安保理決議の履行状況をまとめたもので、報告書はシリアの軍と情報機関のレバノンからの撤退を確認する一方、「シリアからレバノン国内に武器やパレスチナ過激派の流入が増えている」と警告した。
 報告書は、米国がテロ組織と認定し、安保理決議で武装解除が要求されているイスラムシーア派組織ヒズボラについては、なお多数のロケット弾などを保有する現状を挙げて武装解除を重ねて要求した。
 パレスチナ武装組織の要員や武器の供給ルートについて、報告書は「レバノン国内の難民キャンプを拠点にシリアからの流入が増えている」と懸念を示した。
 これに対し、シリアのメクダッド国連大使は同日、「シリアはレバノンへのいかなる武器輸出もしていない」と報告書に強く反発した。(産経)