イラク派兵の是非、ブレア首相「神が審判」


◎【ロンドン=森千春】ブレア英首相は、4日放映の民放ITVのトーク番組で、2003年のイラク派兵の決定について、「神を信じる人にとっては、(決定への)審判は、神によっても下される」と述べ、イラク戦争の是非は結局、「神」と「歴史」によって判断されるとの信念を披歴した。
 神に祈って決断への導きを求めたかどうかについては、返答を避けた。

 首相が、公の場で、イラク参戦と自らの信仰を結びつける発言をするのは異例。英紙の多くは1面で報じた。

 首相は英国教会の信徒で、シェリー夫人はカトリック信徒。首相が宗教的信念をもっていることは定説だが、英国では、政治家が宗教色を前面に出すと有権者の反発をかうことから、側近たちは、宗教的発言を控えるように助言していた。(読売)




首相候補の交代を検討 イラクシーア派与党会派


◎【カイロ4日共同】複数の4日付アラブ紙は、イラクイスラムシーア派宗教勢力の与党会派、統一イラク同盟(UIA)が、新政府の首相候補に決定したジャファリ氏に代わり、新たな候補の選出を検討していると伝えた。

スンニ派クルド人勢力は、移行政府に続き新政府でもジャファリ氏が首相を務めることに反発しており、シーア派の与党内部でも「ジャファリ降ろし」が本格化する可能性もある。

アルハヤト紙によると、UIA幹部らは投票で首相候補といったん決めたジャファリ氏を交代させることが可能かどうか、聖地ナジャフの宗教権威者らに意見を求めることを検討している。




シーア派排除し連立も イラクスンニ派指導者会見


◎【アンマン4日共同】イラク連邦議会イスラムスンニ派会派「イラクの調和」指導者アドナン・ドレイミ氏(74)は3日、ヨルダンの首都アンマンで共同通信と単独会見し、シーア派宗教勢力「統一イラク同盟」(UIA)が新政府でのジャファリ首相続投方針を撤回しなければ、「UIAを排除した連立政権を樹立する」と表明した。

移行政府でUIAと連立与党を組むクルド人の「クルド同盟」や、世俗派「イラク国民名簿」などもこの方針に合意済みで、同氏は「(連邦議会過半数を占める)140議席は確保できる」とし、独自の首相候補を擁立する用意もあると述べた。

スンニ派を軸に少数派が結束し、第一党UIAに首相候補の変更を強硬に迫る動き。宗派対立による危機が続くイラクの連立協議がさらに混迷するのは必至だ。




■「イラクの危機去った」軍削減は見直しも…米司令官


◎【ワシントン=坂元隆】イラク駐留米軍のジョージ・ケーシー司令官は3日、イラクとワシントンを通信回線で結んで行われた記者会見で、2月にサマッラのシーア派聖廟が爆破されて以来多数の死傷者を出しているイラクの宗派対立について、「暴力が制御不能になっているとは思わない。今では危機は去ったように見える」と発言した。
 ただ、今春から見込んでいた駐留米軍の削減については、見直す可能性があることを示唆した。(読売)




■退路示せぬ日本、イラク陸自 米、日英豪の動き牽制


イラクからの「出口」はいつか。南部サマワに展開する陸上自衛隊の撤退時期をめぐり、日本政府が難しい判断を迫られている。英国軍は6月までの撤退完了を視野に入れるが、新政権樹立を見定めたい米国は撤退に向けた動きを牽制(けんせい)する。だが、その新政権樹立の動きは、武力抗争の拡大で進まない。ぎりぎりまで決断を先送りしたい政府内では、陸自クウェートに一時的に撤退させて新政権樹立を待つ案まで浮上した。

 ■4国協議

 英国 「英国軍は5月中にイラクの治安部隊の育成を終える。条件が整えば、6月までに撤退を完了できるだろう」

 米国 「もう少し、イラクの政治プロセスを見極めるべきだ」

 2月24日、ロンドンで開かれた日米英豪4カ国協議。米英両国の「溝」が浮き彫りになった。

 豪州代表は「豪州軍は自衛隊と行動を共にする」と語った。では、日本はいつ撤退するのか。

 日本 「治安と政治プロセス、復興支援の状況、英豪軍の動きを慎重に見極めたい」

 外務、防衛、内閣官房の課長級職員による代表団が最後まで撤退時期に触れることはなかった。

 イラク南部の治安維持を担当する英国が撤退を初めて口にしたのは昨年9月の協議。春から夏にかけてアフガニスタン派遣部隊を増強する必要に迫られたからだ。

 即座に反論したのが米国だった。「(05年)12月にイラク国民議会選挙がある。イラクがバラバラになってもいいのか」と、議論自体を封じた。

 その米国も、今は「撤退の議論までノーとは言わなくなった」(防衛庁幹部)。外務省幹部は「ここ数カ月が勝負という事情は、米国も理解している」と分析する。

 だが、現在イラクに展開する28カ国のうち撤退を表明した国はまだない。英国も対米関係重視では日本と変わりない。当初2月としていた英国軍の撤退開始時期を、最近は「4月でも構わない」と口にし始めた。日本政府高官は「3月の撤退開始は、もうない」とみる。準備作業がもたつく新政権の発足まで、英国軍は撤退を始めないと読む関係者もいる。

 ロンドン会合は次回の日程も決めずに終わった。18日には豪州で日米豪の外相による安全保障対話が開かれ、「(陸自などの)撤収について話し合われる確率が高い」(麻生外相)という。

 自衛隊幹部は「政治がどう判断するかだ」と、小泉首相の決断を待つ。

 ■シナリオ

 「全般を考えて、日本が主体的に判断する」

 3日夜、小泉首相陸自の撤退時期をただす記者団に、そう語った。政府関係者は「小泉心理学は複雑だ。対米追従と言われることを嫌うが、日米同盟を損なうな、とも言う」と語る。

 「主体的」判断は、そう簡単ではない。

 英豪両軍とほぼ同時期に、防衛庁長官が首相の承認を得て撤収命令を出し、自衛隊が「地元の人に惜しまれながら」(幹部)サマワから引き揚げる――。政府が思い描く、最高のシナリオだ。

 ただ、撤退には2〜3カ月かかる。米国の希望通り、新政権樹立などの政治状況をぎりぎりまで見極めれば、6月の撤退完了を考える英国と足並みがそろわない。

 そこで窮余の策として政府内の一部で浮上したのが、撤収命令を待たずに部隊指揮官の判断で陸自を一時的にクウェートに退かせる案。新政権発足を見届け、首相が撤退を表明。防衛庁長官が撤収命令を出す。

 だが、複数の政府高官は「国内的、国際的に説明がつくのか」「文民統制の観点から問題がある」と指摘する。防衛庁にも「首相が表明して堂々と引き揚げるべきだ」(幹部)との声がある。

 ならば、撤退期間を短縮できないかと、警備要員増強などのための支援部隊派遣案も浮上した。

 だが、基本計画で定めた陸自定員600人を上回れば、事前に計画変更の閣議決定が必要になる。撤収のための派遣が、「事実上の撤退表明につながる」(内閣官房幹部)可能性もある。

  政府が今、決めているのは「日本が最初に撤退意思を表明する事態だけは避ける」(防衛庁幹部)という方針だけだ。(朝日)