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中国、イラン包囲網崩す 油田開発契約、締結へ


◎「核」制裁、議論の最中

 【ワシントン=気仙英郎】米政府は、中国とイランが、イラン南部ヤダバラン油田の開発契約を今月中にも正式締結する可能性が強まっていることに神経をとがらせている。イランの核開発阻止に向けて世界的な包囲網を構築しようとしている最中に、中国とイランが正式合意すれば、核開発問題でイランによる瀬戸際外交を助長しかねないからだ。三月の国際原子力機関IAEA)定例理事会ではイランに対する経済制裁論議される見通しだが、油田開発問題は対イラン結束の弱点になりそうだ。 


 二〇〇四年十月にイランと中国が取り交わした覚書によれば、中国の中国石油化工(シノペック)が、イランから液化天然ガスを購入するかわりに、シノペックが二十五年間のヤダバラン油田の開発権を獲得する内容。ヤダバランは最大で日量三十万バレルの生産を想定。米国についで、世界第二位の石油消費国である中国にとって、大きな石油資源の獲得につながる。


 一方のイランのアフマディネジャド政権にとっても、三月のIAEA理事会までに、自国の核開発に理解を示す中国との間で石油開発契約を結ぶことで、国際包囲網を崩す狙いがある。


 米国はイランに対し、ロシアや中国とも連携しつつ、「イランが国際社会で孤立していることを知らしめる」(ライス国務長官)包囲網構築をめざしている。IAEAは今月四日の緊急理事会で、イラン核開発問題を国連安全保障理事会に付託することを決めた。


 しかし中国の動きは、こうした国際協調の流れに水を差す恐れが強い。インドも米国の反対にかかわらず、イランとのパイプライン建設計画を進める方針を固め、インドのシン首相が十七日、議会に計画を報告した。


 ネグロポンテ米国家情報長官は今月初旬の上院情報特別委員会で、「(各国の)外資源獲得競争が、イラン、ベネズエラ、シリア、スーダンなどの米国の政治的敵対国の勢力を拡大し、米国は、国家安全保障面の深刻なリスクや外交政策面の課題に直面する可能性がある」と証言した。


 一方、イランでは日本企業が開発権を取得したアザデガン油田計画がある。同油田はヤダバラン油田に隣接し、「地下ではつながっている」(外交筋)ともされる。仮に中国による開発が進むと、アザデガン油田から原油を吸い上げられる可能性さえあるという。


 今後の対イラン経済制裁について、日本の外務省幹部は「油田開発があるからイランの核開発阻止に腰が引けるということはない」と強調する。しかし、中印などの“抜け駆け”で、対イラン制裁の効果が薄まるばかりか、日本の権益も侵されかねず、日本政府は懸念を深めている。(産経)