マドラサ(神学校)から外国人学生を閉め出す政策進まず


パキスタン神学校 外国人退去進まず 年内期限 宗教勢力、政府に反発


◎【バンコク=岩田智雄】テロリストを生む温床との批判を受けているパキスタンイスラム神学校(マドラサ)から外国人神学生を締め出すため、政府が設定した期限が三十一日に迫っている。しかし、イスラム指導者らは規制に反発、三分の一以上の外国人学生が滞在を継続しており、政府がイスラム宗教勢力をコントロールできない実態を改めて示している。
 ロイター通信などによると、シェルパオ内相は二十九日、マドラサで学んでいた外国人学生九百八十八人のうち65%の六百三十三人が国外に退去したものの、依然、35%が残っていることを明らかにした。
 同内相は退去を求める方針に変わりがないことを強調し、南部の中心都市カラチがあるシンド州の当局者は、州内に残る九十二人の外国人学生について「三十一日までにパキスタンから離れなければ、国外追放する」として強硬手段も辞さない構えを示した。
 しかし、こうした政府の姿勢に対し、マドラサの同盟組織幹部、ジャラダリ師は「外国人学生は一般の大学で学ぶことは許可されている。差別的な決定を受け入れることはできない」として、外国人学生の退去措置には応じない考えを強調。さらに、一日に政府に対する抗議集会を予定しており、すべてのマドラサに参加を呼びかけていることを明らかにした。
 パキスタンにはイスラム教育を中心とした寄宿制の神学校であるマドラサが約一万二千校あるとされる。今年七月に起きたロンドンでの連続爆破テロで、テロ犯の一人が事件前にパキスタン東部ラホール近郊のマドラサを訪れ、何らかの形でイスラム過激派と接触していたのではないかとの観測が出ている。
 欧米などからの批判を受けて、ムシャラフ大統領はマドラサからの外国人学生の退去や、全校の政府への登録を義務付ける改革を打ち出した。
 だが、パキスタンは二〇〇一年の米中枢同時テロ後にも、マドラサアフガニスタンイスラム原理主義勢力タリバンを生んだと批判されており、ムシャラフ大統領は当時、同様のマドラサ改革措置を打ち出しながらも、イスラム勢力の抵抗で失敗した経緯があり、今回も同じ轍(てつ)を踏むことになりかねない。(産経)