ポーランド軍が駐留延長決定
■ポーランド駐留延長 対米・復興事業参入を考慮
◎【ベルリン＝黒沢潤】ポーランドのマルチンキエウィチュ首相は二十七日、イラクのポーランド部隊の駐留を来年一月から一年間延長する意向を表明した。カチンスキ大統領が近く正式決定する。前政権は千五百人で構成する同部隊を来年一月に完全撤退させる方針を示していたが、新政権はこれを見直した形だ。ポーランド国防省高官によれば、今後は部隊を来年三月にも九百人に縮小した上で、主にイラク兵の訓練を行う方針という。
ポーランドはイラク戦争における大規模戦闘終結後、イラク中南部で多国籍部隊の治安維持活動を主導し、一時は二千四百人を駐留させていた。しかし、爆弾テロなどでこれまでに十七人の兵士を失ったほか、二人のジャーナリストも犠牲となっており、国民の約七割が駐留に反対している。
こうした中、駐留を延長した背景には、ポーランド政府が米国から軍事援助を引き出したいとの思惑があるほか、米国ビザの発給緩和も実現させたいとの狙いがある。ポーランドは大規模戦闘終結後、ビザなしで国民が渡米できるよう米政府に要請したものの、断られた経緯がある。
米保守系シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート」（ＡＥＩ）に勤務した経験を持つシコルスキ国防相は、米共和党関係者とも関係が深いことから、今後、ポーランド側の要求を積極的に働きかけていくものとみられる。
ポーランドは駐留を延長することでイラク復興事業への参入機会も増やしたい考えだ。ポーランド企業は大規模戦闘終結後、復興事業への積極参加を望んだものの、期待通りの結果となっていないのが実情だ。同国の二〇〇五年の経済成長率（予想）は３・５％前後と堅調ながらも、国営企業のリストラなどで失業率が１８％前後となっている。政府は復興事業に参入することで雇用改善への刺激剤としたい考えだ。
一方、ブルガリアとウクライナの部隊が二十七日、イラクからの撤退を完了した。ハンガリー部隊も昨年末に撤退している。これに対し、ルーマニアとチェコは駐留延長を決めている。(産経)
■「選挙の１年」 「挙国一致」政権目指す スンニ派取り込み課題
◎【カイロ＝加納洋人】イラク国民議会選挙で第一、第二勢力となることが確実となったイスラム教シーア派とクルド人勢力の各連合会派の指導者が二十七日、北部アルビルで会談し、スンニ派など幅広い勢力を巻き込んだ「挙国一致」の連立政権を目指すことで合意した。同議会選挙をめぐっては、スンニ派やアラウィ前首相らの世俗勢力が、選挙で不正があったとして反発、民族・宗派間対立が再燃する懸念が高まっており、今後、混乱回避に向けた連立交渉が進展するかが焦点となる。
バグダッドからの報道によると、シーア派連合会派「統一イラク同盟」（ＵＩＡ）の一角を占めるイラク・イスラム革命最高評議会（ＳＣＩＲＩ）の指導者アブドルアジズ・ハキーム師は二十七日、北部アルビルで、クルド人の連合会派「クルド同盟」の指導者のバルザニ氏と会談。会談後の記者会見で、バルザニ氏は「われわれはあらゆる党派を含む政府をつくることで原則的に合意した」と述べ、両会派が、スンニ派やアラウィ前首相らの世俗勢力などを巻き込んだ本格政権の樹立を目指す方針を示した。
両会派は、現在の移行政府でも連立を組んでおり、本格政権でも両会派を中心とした連立政権が誕生する可能性が高まっている。
一方、首都バグダッドでは同日、スンニ派やアラウィ前首相らの世俗勢力の支持者ら約五千人がデモ行進し、「本当の選挙なしでは、民主主義は成り立たない」「今回の選挙は不正だらけだ」と抗議し、選挙のやり直しを求めた。
スンニ派は背後に武装勢力を抱えており、治安安定化のためにも、スンニ派を本格政権に取り込むことが求められている。さらに、ＵＩＡの両翼を占めるシーア派政党ＳＣＩＲＩとダアワ党はイランとの関係が深く、宗教色が強いことから、政権のバランスをとるためにも世俗派の参加が重視されている。「イラク民主化」を主導する米国は良好な関係を持つクルド人勢力と連携をとりつつ、「国民融和」に向けた政権作りを目指すものとみられる。
国民議会選挙（定数二七五）の開票は現在も続いており、早ければ年内にも最終結果が発表される見通しだが、ロイター通信によると、集計の結果、ＵＩＡが約百三十議席、クルド同盟が五十二議席、スンニ派の連合会派「イラク合意戦線」が四十一議席、アラウィ氏らの世俗会派「イラク国民名簿」が二十四議席を獲得する見通しだ。
ＵＩＡの議席数は現状では過半数に達しておらず、安定的な政権の樹立のためには、スンニ派とアラウィ氏らの世俗勢力との協議が焦点となる。汎アラブ紙アルハヤートなどによると、大連立に向けＵＩＡが獲得した議席のうち十議席をスンニ派勢力に与える案や、六カ月以内に再選挙を実施するなどの譲歩案が浮上している。(産経)
