地震被災から1年


地震被災から1年、支出は復興資金2割


スマトラ沖地震の被災地復旧・復興機関(BRR)は、地震発生から26日で1年を迎える前に、復興の進ちょく状況を報告した。この間の支出は復興資金として獲得した44億米ドルのうち17%に当たる7億7,500万米ドルにとどまり、いまだに6万7,500人がテントでの生活を余儀なくされている。BRRは目標とする2009年の復興完了までに80億〜100億米ドルが費やされると見込んでいる。

 BRRと世界銀行が共同で作成した報告書は、現在1,000件の再建計画が進行中とし、特に来年末までにテント生活者をゼロにする目標に沿って来年中に7万5,000戸の住宅を建設できると予想した。

 地震津波による避難総数50万人のうち、テント暮らしを含めたホームレス人口は19万人に上る反面、住宅建設は1万6,200戸にとどまっている。テント以外にも1万5,000世帯が仮設住宅で生活している。死者・行方不明者数は16万7,000人以上となった。

 報告書は住宅建設の遅れについて、当初1戸3,000米ドルとする低すぎる上限を設定したことなどを要因に指摘している。現在は着工件数が月5,000戸に達しているもののの、建設が容易な地区だけにとどまっており、津波で洗い流された土地などの最も困難な地域については今後大きな課題となるとした。

 ■日本支援の道路建設着工

 このほかの優先課題として報告書は、道路修復を挙げている。これまでに通行不能となった3,000キロメートルの道路のうち235キロメートル分が修復されたものの、雨期に入り特に西海岸地域へのアクセスが困難になっていると指摘。新たな運輸マスタープラン(基本計画)を策定中と明らかにした。また港湾再建については資金不足が深刻となっている。

 西海岸の道路再建では、16日に日本の無償資金協力によるチャラン〜ムラボ(112キロメートル)間の起工式が開催された。上場国営建設アディ・カルヤが施工し、6月末に完工する予定。費用は、26億5,168万円。このほかに片平エンジニアリングなど5社のコンソーシアムが1億5,157万円の施工監理契約を結んでいる。同工事が完了すれば、バンダアチェ〜ムラボの西海岸道路が完成する。この道路と平行して内陸部には米国が資金提供する高速道路が建設される。

 ■観光振興を

 報告書によると、被災での生産セクターの損失額は12億米ドル。半分以上は漁業での損失とした。今年の域内総生産成長率の低下はアチェで5%、3月の地震で被害の大きかったニアス島で20%が予想される。

 被災地の資産復旧に58億米ドルが必要だが、国際社会を含めた支援表明額は90億米ドルに達している。復旧予算以上の資金は「よりよいアチェとニアス」建設に充てられる見通し。BRRは2009年までに80億〜100億米ドルが費やされると予測している。

 BRRの来年の復興計画の重点課題は、◇すべての避難者に仮設を含めた住宅を提供◇主要インフラ回復◇機関・人材能力の強化◇被災者の生計回復――の4点を掲げる。

 また長期的な経済開発として、これまでのようにインドネシア最東端の遠隔地としてではなく、国内他地域や世界とのつながりを強化することで通商の要となり得ることや、美しい海岸、世界水準の国立公園などを持つことから観光開発も可能としている。(NNA)