駐留米軍司令官が、親イラン勢力の拡大に警戒心


■親イラン拡大警戒 イラク駐留米軍司令官「新政権樹立に影響力」


◎【ワシントン=有元隆志】イラク多国籍軍を率いる米軍のケーシー司令官は十六日、バグダッドから中継映像を通じて記者会見し、十五日に行われた国民議会選挙で、イランがイラク南部を基盤とする政党を支持し、今後も「親イラン」の新政権樹立のため影響力を行使しようとしているとして、「懸念すべきことだ」と強い警戒感を表明した。
 同司令官は「決定的な証拠はない」としながらも、米軍が集めた情報などをもとに判断したという。
 イラク南部はイスラムシーア派が大多数を占めており、シーア派国家のイランが、浸透を図ろうとしているとの見方はかねてあった。ケーシー司令官も「イランは国民議会選挙に向け、南部地域に数百万ドルをつぎこんでいる」と述べていた。
 しかもシーア派の主要政党であるイラクイスラム革命最高評議会(SCIRI)の民兵組織、「バドル軍」はイランの影響を強く受けているとみられている。「バドル軍」はフセイン政権崩壊後、内務省や治安部隊に入りスンニ派住民を不当に拘束、虐待をしているとの疑惑も出ている。
 ブッシュ政権内でも、イラク国内の宗派対立が深まることに懸念が出ている。ケーシー司令官の発言は、勢力拡大を図るイラン側を牽制(けんせい)する狙いがあるものとみられる。
 一方、ケーシー司令官はシリアに関しては、自爆犯や外国人兵士のイラクへの流入を一部ではあるものの、制限しようとしているとして、一定の評価をした。(産経)




■首相がスンニ派に国造りへの積極参加呼びかけ


◎【カイロ高橋宗男】イラク移行政府のジャファリ首相(イスラムシーア派)は17日、新生イラクの建設にはイスラムスンニ派シーア派の連携が必要だとして、少数派のスンニ派に対し国造りへの積極参加を呼びかけた。15日の連邦議会選挙を受け早ければ年内にも発足する正式政府でのスンニ派会派との連立を視野に入れた発言とみられる。スンニ派会派幹部は連立参加に意欲を示しており、今後、旧フセイン政権の基盤だったスンニ派勢力のイラク政界「復帰」に向け、交渉が活発化しそうだ。
 AFP通信によると、ジャファリ首相は17日、イラク中部のシーア派聖地ナジャフに同派の最高権威シスタニ師を訪れた。訪問後、首相は「(イラク北西部の)モスルやラマディ、ティクリートの兄弟(スンニ派)よ、ナジャフやカルバラの兄弟たち(シーア派)は次期議会で互いに手を携え、新生イラクの建設に取り組むことを待ち望んできた」と述べた。
 ジャファリ首相が所属する宗教色の濃いシーア派連合会派「統一イラク同盟」は連邦議会(定数275)で第1党の座を維持するものの、首相選出に必要な過半数には届かない見通しだ。スンニ派への連携呼びかけの背景には、最大課題の治安対策でスンニ派中心の武装勢力の攻撃を抑制するためには次期政権へのスンニ派の取り込みが不可欠との認識があるとみられる。
 一方、スンニ派の連合会派「イラク調和戦線」幹部のアドナン・ドレイミ氏は同日、「幅広い連立が国民融和を体現することになる」と連立参加への意欲を示した。同氏はアラウィ元暫定政府首相率いる世俗派会派「イラク国民リスト」やクルド人の「クルド集会」との連立の可能性を示唆しており、「スンニ派武装勢力との交渉能力」をカードに今後、各派との連立交渉を有利に進めたい考えとみられる。
 イラクシーア派が人口の約6割を占める多数派だが、スンニ派に基盤を置く旧フセイン政権によって反体制派として弾圧されてきた。だが、米国がイラク戦争後のイラク統治でシーア派クルド人を重用したこともあって、スンニ派は政治プロセスに背を向けてきた。今回の選挙では、今年1月の移行国民議会選挙をボイコットしたスンニ派住民の多くが投票しており、スンニ派会派が一定の議席数を確保するのは確実な情勢だ。(毎日)