フセイン裁判、本格審理先送り


■厳戒下「フセイン裁判」再開 本格審理 先送り 次回は来月5日


◎関係者の安全確保課題


 【カイロ=加納洋人】イラクフセイン元大統領ら旧政権幹部の犯罪を裁く特別法廷の第二回公判が二十八日、首都バグダッドで開かれた。公判では最近死亡した証人の尋問調書が朗読されるなどしたが、本格審理は先送りされた。次回公判は十二月五日に行われる。


 法廷に出廷したフセイン元大統領は「手錠をかけられたうえ、エレベーターが壊れ、階段を四階分歩かされた」と述べたうえで、アミン首席判事に「君はイラク人だろう。侵略者であり占領者である彼ら(米兵)に命令せよ」と語り、挑戦的な姿勢を崩さなかった。
 弁護団には今回、新たに、ミロシェビッチユーゴスラビア大統領の弁護を務めるラムゼー・クラーク元米司法長官とカタールのナジブ・ヌアイミ元法相が加わった。両氏は裁判の正当性について全面的に争う構えだ。


 元大統領と旧政権幹部七人の被告計八人は、一九八二年にバグダッド北方のドゥジャイル村で発生したイスラムシーア派住民約百五十人の虐殺事件への関与が問われているが、初公判では全員が無罪を主張している。この日の公判では、十月にがんで死亡した元イラク情報機関員の証言が朗読され、証言を録画したビデオも流された。


 同法廷をめぐっては、関係者の安全に対する懸念が高まっている。武装勢力の攻撃を警戒して開廷時間が事前に発表されなかったほか、証言者の姿を隠すための衝立(ついたて)が法廷内に設置されるなど、厳重警戒下での開廷となった。


 さらに、弁護団からは、比較的治安の安定している北部クルド人地区で同法廷を開廷する案が出されている。
 十月二十日には、元大統領の側近の弁護人がバグダッド市内の自宅兼事務所から武装勢力に拉致され、射殺体で見つかったほか、別の側近の弁護人も十一月八日に襲撃され、死亡している。
 また、ロイター通信によると、イラク警察は二十七日、同法廷の捜査判事の暗殺を企てたとして、スンニ派アラブ人の男八人を北部キルクークで拘束した。男らは、旧政権ナンバー2のイザット・イブラヒム元革命指導評議会副議長の命令書を携えていたという。同元副議長は旧政権崩壊後、反米武装勢力の指揮をしているとされる人物だが、その消息は不明のままとなっている。
 捜査判事の暗殺計画が表面化したことで、同法廷関係者の安全確保が容易ではないとの見方が強まっている。(産経)




■「勝利か敗北か不明」 対テロ戦争で米議会報告


◎【ワシントン28日共同】米議会調査局は28日までに、2001年の米中枢同時テロ以降、ブッシュ政権が進める「対テロ戦争」に関し、評価の基準が不適切で、米国が勝利しつつあるのか敗北しているのか分からないとする報告書をまとめた。ロイター通信が伝えた。
 ブッシュ大統領イラクの旧フセイン政権打倒で世界は安全になったなどと主張。一方でイラクで米兵の死者が2000人を超え、反米武装勢力の活動や世界各地のテロは収まる兆しがなく、報告書は対テロ戦争の成果に疑問を投げ掛けた。
 報告書は国際テロ組織アルカイダのメンバーをどれだけ殺害、拘束したとの統計では、テロリスト側にどの程度の打撃を与えたか不明と指摘。費用対効果がチェックされないまま巨額のイラク駐留費などが使われているとした。




■再送:フセインイラク大統領の第2回公判、1週間の休廷宣言で終了


◎[バグダッド 28日 ロイター] フセインイラク大統領らの戦争犯罪を問う裁判の第2回公判が28日行われた。フセイン被告が判事に食ってかかるなどしたが、アミン裁判長は、ラマダン元副大統領ら他の被告の弁護人が殺害された後、後任が決まっていなことを理由に12月5日まで休廷することを宣言した。
 フセイン被告は、10月19日の第1回公判のときと同様に反抗的な態度を見せ、遅刻の理由を質問した判事を非難した。
 フセイン被告はこの日、「戸口に連行された時に手錠をかけられた。被告に手錠をかけて出廷させることはできない」と主張した。
 次回公判が開かれる12月5日は、イラクの議会選挙の10日前に当たり、このタイミングを選んだことで政府が政治的に有利な展開を狙っているとの批判も予想されている。




武装グループがドイツ人女性考古学者を誘拐


◎ドイツ政府の発表などによると、イラクで医薬品を運ぶ人道支援事業にあたっていた女性考古学者、スザンネ・オストホフ(43)さんが誘拐されたことが29日わかった。ドイツ人が誘拐されたのは初めて。犯人グループはドイツがイラク政府に協力しないよう要求、聞き入れられない場合は殺害すると明言している。(毎日)