チェチェン議会選/英BBCの記者、アラファト議長搬送に涙で苦情


チェチェンあす議会選 紛争終結の演出図る露


◎【モスクワ=内藤泰朗】ロシア南部チェチェン共和国で、一九九九年に始まったロシア軍の第二次チェチェン侵攻後初めての共和国議会選挙が二十七日に行われる。対チェチェン強硬姿勢を貫いてきたプーチン政権は今回の選挙実施で、共和国の「正常化」を内外に印象付けたい狙いだ。しかし、テロへの不安は消えず、安定化にはほど遠い状況となっている。
 九九年当時、首相だったプーチン氏は、モスクワでの連続アパート爆破の背後にチェチェン独立派武装勢力ありとして軍事侵攻を唱え、その後、国民の圧倒的支持を得て、大統領に選出された。同氏が「対チェチェン戦争で権力を得た大統領」と呼ばれるゆえんである。
 独立派武装勢力を武力でねじ伏せてきたプーチン大統領にとり、共和国議会が侵攻以来初めて活動を始めることは、紛争が終結し、共和国が正常化への道を歩み始めた印象を内外に植えつけるうえで重要な意味を持つ。
 大統領は今年九月の国民向けのテレビ放送で、「チェチェンのすべての問題が武力によらず、公正に解決されるようになる」と強調していた。選挙はしかし、共和国大統領の父親を独立派の爆弾テロで暗殺されたラムザン・カディロフ第一副首相(29)を中心とする親露派政権を作るために行われるというのが実態だ。
 カディロフ氏を支持する候補を政党候補者リストの上位に据えない限り選挙には参加できない仕組みとされ、「新しい議会は近い将来、カディロフ氏を大統領にするため設けられる」(露英字紙モスクワ・タイムズ)。
 紛争が長期化する中、現共和国政府を「クレムリンの傀儡(かいらい)」と呼ぶ独立派武装勢力の力は弱まっているものの、テロ戦術に切り替えて依然、強い抵抗を続けており、治安や政治の安定化からはかけ離れた状況にある。
 ロシア側は事実上の無法地帯と化したチェチェンで多くの武装勢力を力で束ねることができるカディロフ氏に頼らざるを得ないのが実情で、米カーネギー財団モスクワセンターのペトロフ研究員は「カディロフ氏への依存は安定ではなく、さらなる紛争をもたらす危険すらはらんでいる」と、現状の危うさを指摘した。(産経)




■「泣いた」報道は公平欠く BBC


◎【ロンドン25日共同】英BBC放送理事会の苦情処理委員会は25日、BBCラジオの記者が昨年10月、病気治療のためパリに向けヨルダン川西岸を離れるパレスチナ自治政府の故アラファト前議長を見て「泣いた」と語ったことについて「報道の公平性を欠いた」と結論付けた。
 前議長がヨルダン川西岸を離れた翌日、記者はラジオで「弱々しい老人を運ぶヘリコプターが、破壊された議長府の上に上昇した時、泣いてしまった」と語った。
 PA通信によると、これは前議長に対する「涙の賛辞」であり、パレスチナと対立するイスラエル側に同様の表現が使われることはないなどとして、聴取者から数100件の苦情が寄せられた。
 BBCの担当ディレクターは「編集上の判断ミスがあった」として既に謝罪しているという。