アメリカが武器輸出を解禁した背景


■対インドネシア 米、武器輸出を解禁 テロ戦“前線国家”支援


◎【バンコク=岩田智雄】インドネシアに対する米国の武器輸出が解禁されることになった。米国は、インドネシア軍が東ティモールで引き起こした人権侵害を理由に一九九九年、同国への武器禁輸と同時に同国との軍事交流停止にも踏み切り、最近になって段階的に軍事関係の改善を進めていた。テロとの戦いの“前線国家”であるインドネシアにテコ入れするのが、軍事援助全面再開の最大の狙いといえる。
 米国務省のマコーマック報道官が二十二日に発表した声明によると、再開される軍事援助はインドネシア軍の近代化を支援し、テロとの戦い海上の安全保障、災害援助を支えるものだという。
 ロイター通信が米政府当局者の話として伝えたところによると、援助にはインドネシアが強く求めていた武器輸出再開が含まれるものの、実際の売却は同国の人権状況をみながら決めるという。
 インドネシアには新しい兵器を輸入する財政的余裕はなく、ジャカルタの外交筋は援助は当面、F16戦闘機などの維持補修に対して行われることになると推測している。
 米国は昨年末のインド洋大津波被害に対する救援活動を機に、インドネシアとの軍事関係改善への動きを本格化させ、今年に入り、軍人の研修受け入れや米軍による医薬品支援を行ってきたものの、武器輸出の解禁は見合わせていた。
 そうした中、インドネシアのユドヨノ大統領は今年五月の訪米や、先に韓国・釜山で行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の機会をとらえ、ブッシュ米大統領に繰り返し武器禁輸の解除を求めていた。
 インドネシアは、東南アジアのテロ組織、ジェマ・イスラミア(JI)による欧米の権益や観光客を狙ったテロが首都ジャカルタや観光地のバリ島で相次ぎ、国際テロの脅威にさらされている。
 インドネシア当局が最近、発表したJI製作とみられるビデオテープではJI幹部のトプ容疑者とされる覆面姿の男が米国やオーストラリアに対しテロを警告しており、米国としても、インドネシアとの関係を改善、そのテロ対策を全面支援する必要に迫られている。
 インドネシアが世界経済の大動脈であるマラッカ海峡の沿岸国として海上安保の要衝にあるという地政学的要因や、東南アジアで影響力を増す中国を牽制するという米国の思惑も、両国の関係改善の動きの背景にある。
 アフガニスタンでの対テロ軍事行動やイラク戦争を機に、中東のイスラム諸国で反米感情が高まる中で、国民の大半が穏健なイスラム教徒であるインドネシアと良好な関係を築きたいという米国の思惑もうかがえる。
 ただ、今回の軍事援助再開に対しては、インドネシア軍による東ティモールでの人権侵害を追及している団体から、非難の声も上がっている。(産経)




■テロ問題専門家の米国人を再び国外追放


◎[ジャカルタ 25日 ロイター] インドネシア当局は、テロ問題および東南アジアにおけるイスラム武装勢力の専門家である米国人を、2年連続で国外追放した。同国外務省の報道官が25日に確認した。
 国外追放されたのは、ブリュッセルに本拠地を置く国際危機グループ(ICG)ディレクターのシドニー・ジョーンズ氏。
 同氏はロイターに対し、24日に旅行先の台湾から帰国しようとした際に入国を拒否された、と語った。住民票も没収されたという。
 ジョーンズ氏は2004年6月、インドネシアでのテロ活動などに関する一連の報告を行った後にも国外退去を命じられていたが、今年7月になって同国への再入国と居住を許可されていた。




■「人間爆弾」に戦術変更 バリ島テロの計画書押収


◎【ジャカルタ25日共同】インドネシア国家警察は25日、バリ島で10月1日に起きた同時爆弾テロの計画を犯行グループが詳しく記した文書を押収したことを明らかにした。資金不足などから、昨年までの大型テロ3件で使用した車爆弾をやめ、爆弾をリュックで背負った人間が自爆する戦術に変更したことが裏付けられたという。
 発見が困難な「人間爆弾」への方針変更が確認されたことで警備態勢の見直しを迫られそうだ。
 文書はコンピューターのファイル。今月9日にジャワ島東部で警察との銃撃戦の末に死亡したイスラム地下組織ジェマ・イスラミア(JI)の爆弾専門家アザハリ容疑者の隠れ家で見つかった。