インド同時テロの死者59人に


■死者59人に、インドの首都で過去最大のテロ被害


◎【ニューデリー=林英彰】インドの首都ニューデリーで29日に起きた同時爆弾テロの死者数は、30日までに59人に達した。負傷者数は210人。

 インドの首都で起きたテロ事件の被害としては過去最大となる。

 地元テレビは、カシミール地方で活動する組織「インクラブ(革命)」が犯行声明を出したと報じた。警察によると、同組織は1996年に発足し、パキスタンを拠点とするイスラム過激派組織ラシュカレ・タイバと関係がある。活動は活発ではなく、当局は声明の真偽を確認中という。

 爆発は、ヒンズー教の祭りを3日後に控え、多くの買い物客でにぎわっていた二つの市場と、路線バス内で発生した。(読売)




ニューデリー同時テロ 死者59人負傷210人 イスラム過激派の犯行か


パキスタンとの緊張緩和に水
 【シンガポール=藤本欣也】インドの首都ニューデリーで二十九日に起きた同時爆弾テロ事件は、三十日までに確認された死者が五十九人にのぼり、二百十人が重軽傷を負った。インド治安当局はテロに関与した疑いで二十人以上を拘束するなど捜査を本格化したが、パキスタンに拠点を置くイスラム過激派の犯行との見方が強まっている。ヒンズー教の一部団体からはパキスタンへの反発の声も上がり、パキスタン地震を機に加速する印パ両国の緊張緩和の動きに水を差す可能性もある。
 爆弾テロは、ニューデリー駅近くなど二カ所の市場と、バスの計三カ所で起きた。インド治安当局は三十日、ニューデリー市内に厳戒態勢を敷き、拘束した容疑者の取り調べを進めているほか、バス車内に爆弾入りのカバンを置いたまま下車した二十歳代の男の行方を追っている。
 ロイター通信によると、北部ジャム・カシミール州スリナガルの報道機関に同日、「インクラビ」という組織のメンバーから電話があり、ニューデリーの爆弾テロの犯行を認めた上で、さらなる攻撃を警告した。
 シンガポール防衛戦略研究所のテロ専門家、グナラトナ氏は産経新聞に対し、「印パ両国の和平プロセスに反発するテロ組織が実行した可能性が高い」として、カシミール地方の分離独立を求めるイスラム過激派「ラシュカレトイバ」が関与した可能性を指摘。「インクラビはラシュカレトイバの傘下組織とみられる」と語った。
 またPTI通信によると、インド治安当局は今回のテロが同一グループによる犯行とほぼ断定。高性能爆薬が使用されている点などから、ラシュカレトイバが以前からつながりのあった国際テロ組織、アルカーイダの協力の下で同時テロを実行した可能性があるとみている。
 こうした中、三十日にはニューデリー市内でヒンズー教徒らによるパキスタンへの抗議デモがあった。印パ両国間では緊張緩和の動きが進んでいる折だけに、インドのシン首相は、事件をテロと断定しながらも「テロリストたちはわれわれの間に疑念と恐怖が広がることを狙っている」と国民に冷静な対応を呼びかけた。
 パキスタン外務省も「無実の国民の命を奪ったテロを強く非難する」との声明を発表した。
 ただ、二〇〇一年にはイスラム過激派がニューデリーの国会議事堂を襲撃し十数人が死亡、両国関係が極度に悪化した経緯があり、今後の捜査の進展によっては両国が進めてきた対話路線に影響を与える可能性もある。
 今回のテロ事件は、高度成長を背景に有望な投資先として注目を集めているインドの首都で起きただけに、日本を含めた外資系企業の投資熱に冷や水を浴びせた格好だ。今後もこうしたテロが続けば、インド経済への影響も避けられない。(産経)




■<CIA身元漏えい>イラク戦争開戦の正当性論議が再燃


◎【ワシントン笠原敏彦】ブッシュ米政権のイラク政策に影響を与えてきたリビー副大統領前首席補佐官が中央情報局(CIA)工作員身元漏えい事件で起訴されたことで、米国内ではイラク戦争開戦の正当性をめぐる論議が再燃し始めている。身元漏えいの目的は、ブッシュ政権の「開戦の大義」に挑戦した元外交官の信頼性をくじくことだったが、今後、事件の裁判では逆に、その大義を「情報操作」で支えようとした政権中枢の信頼性が問われることになる。
 ウィルソン元駐ガボン大使の妻がCIA工作員だと暴露されたCIAリーク事件の本質は、ブッシュ政権中枢がいかなる判断で大量破壊兵器の存在を開戦の大義にしたかということだ。元大使が否定した「イラクニジェールからウラン購入を試みた」という情報は、世論にイラク大量破壊兵器計画の存在をアピールする上で、ブッシュ大統領の一般教書演説(03年1月)の核心部分だった。
 CIAが当初からこの情報を重視していなかった事実などから、政権中枢の「情報操作」疑惑は消えない。漏えい事件の根底にあるのは「イラク戦争をめぐる政治的、政策的な争い」(ウォールストリート・ジャーナル紙)というのが一般的な見方だ。
 03年3月の開戦以来の米兵死者数が2000人を超えたことも重なり、これまで沈黙していた有力者も政権批判を始めた。その1人でパウエル前国務長官の首席補佐官だったローレンス・ウィルカーソン氏は最近の講演で、重要な外交政策が「チェイニー副大統領とラムズフェルド国防長官の陰謀団」に乗っ取られていると批判した。
 国務省高官も毎日新聞に対し、ブッシュ政権では「少人数の側近グループが(官僚による)プロセスを無視して外交に介入してくる」と不満を漏らした。同高官は苦境に立つブッシュ大統領の「ボタンの掛け違い」は、単独行動主義的な開戦に慎重だったパウエル前国務長官の発言に耳を貸さなかったことだと指摘している。(毎日)