ファタハ分裂を回避するも、組織の団結は弱まる


パレスチナ評議会選 候補者統一名簿提出、ファタハ新旧分裂回避


◎【カイロ=加納洋人】来年一月に予定されるパレスチナ評議会(自治政府の議会)選挙で、パレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハの新旧両世代が別々の候補者名簿を提出し、混乱が広がっていた問題で、ファタハは二十八日、統一名簿を中央選挙管理委員会に提出し、辛うじて分裂の事態を回避した。しかし、二十八日にはガザ地区ではファタハ系の武装組織が選挙事務所を一時、占拠する騒ぎも起きており、イスラム原理主義組織ハマスに追い上げられるファタハは依然、厳しい状況に置かれている。 
 評議会選挙は、候補者名簿を提出する比例代表制と地域別の中選挙区制に分けて実施され、定数一三二はそれぞれに六十六議席ずつ割り振られている。
 ファタハでは候補者選定の過程で、アッバス議長ら故アラファト議長とともにPLOを支えてきた旧世代と、旧世代の旧態依然とした組織運営に不満を募らせる若手世代の間の対立が表面化。十四日に新旧両世代が別々の名簿を選管に提出し、分裂の危機に陥った。
 こうした中、評議会選挙に初参加するハマスファタハ内の混乱を背景に躍進する可能性が高まり、危機感を強めたファタハは、ようやく名簿の一本化にこぎつけた。
 二十八日に再提出された統一名簿の筆頭は、二〇〇一年秋からのイスラエルとの衝突の中で対イスラエル・テロを指揮したとしてイスラエル軍に捕らえられ、獄中にあるバルグーティ氏で、旧世代の候補者数人が含まれているものの、若手世代が大半を占めるという。
 ロイター通信が二十六日伝えた世論調査によると、ファタハが分裂したまま選挙に臨んだ場合の支持率は21%で、ハマスは30%。ファタハが統一名簿を提出すれば45%が支持するという結果となっており、分裂を回避したファタハとしては選挙での大敗北を避けられる見通しも出てきた。
 しかし、ガザ地区では統一名簿の提出に先立ち、候補者選考の予備選を実施するまで評議会選挙を延期するよう要求するファタハ系の武装組織「アルアクサ殉教者旅団」の活動家数十人が選管事務所を占拠し、自治政府の治安部隊と銃撃戦となる事態が発生。候補者選定の過程で表面化したファタハ内の世代間対立の根が解消されたわけではなく、すでに組織としての限界を露呈しているファタハにとって、組織再生の糸口が見えたとはいえない状況だ。(産経)




■ガザのアッバス議長宅近くで銃撃戦、周辺がパニックに


◎[ガザ 29日 ロイター] ガザ地区にあるアッバスパレスチナ自治政府議長の住居近くで29日、銃撃事件があり、周辺がパニック状態に陥った。アッバス議長は海外に出かけており不在だった。
 警察によると、銃撃は、先日発生した地元一族の狙撃犯との銃撃戦で死亡した警察官の葬儀中に起こった。
 警察官の親族が、パレスチナ自治政府が何もしなかったと訴えアッバス議長宅に程近い警察署に向けて発砲、内部の警察官が応戦した。死傷者の報告は出ていない。
 警察は、アッバス議長宅での衝突はなかったとしている。議長宅では護衛が臨戦態勢をとった。住民の目撃証言によると、市民の一部には銃撃戦のパニックで壁をよじ登ろうとした者もいたという。




■警官襲撃で検問所一時閉鎖 ガザ、混乱浮き彫り


◎【エルサレム30日共同】ガザ地区南部のエジプトとの境界にあるラファ検問所を30日、パレスチナ自治政府の警官数10人が襲撃、空中に向けて銃を発砲するなどして検問所を閉鎖した。立てこもった警官らは立ち去り、ロイター通信によると検問所は再開した。
 同検問所は1967年の第3次中東戦争以来、初めてイスラエルの関与なしで11月下旬に運用が始まったばかり。ガザ地区内の治安の不安定があらためて浮き彫りとなった。
 イスラエルが9月に撤退したガザ地区パレスチナ国家樹立を目指すアッバス自治政府議長にとって指導力を示す試金石。イスラエル以外への唯一の玄関口に関する管理に失敗すれば、議長は国際社会の支援を失いかねない。