ＩＭＦがイラク向け金融支援承認
■戦争犯罪加担で禁固１５年 化学物質売却
◎【パリ２３日共同】オランダのハーグ地裁は２３日、イラクの旧フセイン政権に１９８０年代に化学兵器の原料を売却し、戦争犯罪に加担した罪に問われたオランダ人、フランツ・ファン・アンラート被告（６３）に禁固１５年（求刑同）の判決を言い渡した。
オランダからの報道によると、同被告はマスタードガスなど化学兵器の原料となる化学物質を日本や米国で買い付けて旧フセイン政権に売却。判決は、化学兵器が当時、イランと戦争中だったイラクで毒ガス製造に用いられ、クルド人迫害にも使用されることを知りながら化学物質を調達したと指摘した。
判決は８８年にイラク北部ハラブジャでクルド人虐殺があったとする一方、被告による化学物質売却は虐殺の発生前だったとし、虐殺への責任は問えないとの判断を示した。
■軍基地襲撃、10人死亡＝外交官らスーダン人6人誘拐
◎【カイロ23日時事】ロイター通信によると、イラクの首都バグダッドの北方約70キロのアドハイム近くにあるイラク軍基地を23日、武装グループが襲撃、イラク兵10人が死亡、20人が負傷した。15日に投票が行われた国民議会選以降では、武装勢力による一回の攻撃としては最大の被害となった。
武装グループは重機関銃やロケット砲も使って攻撃した。基地は首都と北部の産油都市キルクークを結ぶ幹線道路沿いにある。
一方、アラブの衛星テレビ局アルジャジーラによると、バグダッドではスーダン大使館の2等書記官を含む同国人6人が、イスラム教の金曜礼拝を終えた後、何者かに誘拐される事件があった。
◎【ワシントン２３日共同】国際通貨基金（ＩＭＦ）は２３日の理事会で、イラクの経済復興支援を目的とした６億８５００万ドル（約８００億円）の金融支援を承認した。イラクの経済・財政運営が安定してきたためで、昨年１１月のパリクラブ（主要債権国会議）合意に基づく債務削減の呼び水となる。
ＩＭＦが承認したのは経済構造改革の実施を条件としたスタンドバイ融資と呼ばれる支援措置。
◎【ワシントン23日時事】国際通貨基金（IMF）は23日の理事会で、イラク向けスタンドバイ（包括的信用枠）融資を承認したと発表した。金額は4億7540万SDR（IMF特別引き出し権）＝約800億円＝。IMFは昨年9月、イラク戦争後の緊急支援を実施したが、本格的な貸し出しとなるスタンドバイ融資は初めて。
これにより、イラク向け債権の80％放棄を決めたパリクラブ（主要債権国会議）合意の完全実施も可能となる。同国の経済再建に向けた環境整備は前進するが、政策実行を妨げている治安情勢をどう安定させるかが課題となる。
■「議会選挙に不正」とスンニ派、世俗派が抗議デモ
◎【カイロ高橋宗男】イラク各地で２３日、１５日に実施された連邦議会選挙に不正があったと抗議する大規模デモが行われた。これまで公表された暫定開票結果で宗教色の強いイスラム教シーア派連合会派「統一イラク同盟」が他会派を大きく引き離していることに反発するスンニ派や世俗派のグループが住民を動員した。これらのグループは選挙での不正の調査を国際機関に求めているが、今後の連立交渉を見据えた駆け引きの一環との見方もある。
首都バグダッドでは同日、約２万人のスンニ派住民らが「我々は不正を受け入れない」などと書かれた看板を手にデモ行進した。北部モスルでも約２０００人、中部ティクリートでも約１０００人が同様のデモを行った。
暫定首相だったアラウィ氏率いる世俗派会派「イラク国民リスト」やスンニ派連合会派「イラク調和戦線」など３５グループは２２日、大票田のバグダッド県の暫定開票結果（開票率８９％）で統一イラク同盟の得票率が５８％と極めて高かったことに「不正が行われた」と反発。国連や欧州連合などによる調査が行われない限り、新議会のボイコットも辞さない構えを示し、「不正な選挙に基づく違法な議会を拒絶する」と主張している。
ＡＰ通信によると、統一イラク同盟の中心組織「イラク・イスラム革命最高評議会」の幹部、バハア・アラジ氏は「イラクの現実を反映した選挙結果を受け入れるべきだ」としつつ、「挙国一致内閣を組むことが可能だ」と他会派に呼びかけ、事態の沈静化を図っている。(毎日)
◎【カイロ＝柳沢亨之】イラク駐留米軍によると、イラク中部バアクーバ近郊バラドルズのイスラム教シーア派モスク（礼拝所）付近で２３日、爆弾を体に巻き付けた男１人が自爆し、警察官１人を含むイラク人１０人が死亡、同４人が負傷した。
２３日には中部アダイムでも、イラク兵１０人が死亡する襲撃事件が発生した。(読売)
