総選挙に向けての動き


■早期のイラク全面撤退なら内戦に=来年以降、駐留軍大幅削減は可能−米大使


◎【ワシントン11日時事】ハリルザド駐イラク米大使は11日、米テレビとのインタビューで、国防族のマーサ民主党下院議員がイラク駐留米軍の半年以内の全面撤退を求めたことに対して、早期に米軍が全面撤退すれば「イスラムシーア派スンニ派の内戦となる恐れがある」と述べ、反対の意向を明らかにした。
 同大使は同時に、イラク情勢が来年以降米軍の大幅削減を可能にする方向に進んでいるとの見方を示した。具体的な米軍の削減規模には言及せず、イラク駐留多国籍軍のケーシー司令官が適切な時期に議論すべき内容だと語った。 




■06年末までに駐留米軍の縮小日程で合意へ=イラク大統領


◎[ベルリン 11日 ロイター] イラクのタラバニ大統領は11日、ドイツのテレビ番組に出演し、イラクは2006年末までに米国主導の駐留多国籍軍の規模を縮小する日程について合意に達するとの見通しを示した。
 大統領は、2006年末以降はイラク軍が多国籍軍を積極的に引き継げる状態となるため、駐留軍の規模縮小が可能になると説明。
 その上で「来年末までには、駐留軍の段階的な撤退に向けた日程について、合意に達することができるだろう」と語った。




■出身部族で支持決める サマワ、「反占領」候補も


◎【サマワ12日共同】陸上自衛隊が駐留するイラク南部サマワでも、選挙戦はピークを迎えた。イスラムシーア派の宗教勢力が主導する現政権への失望から、宗派より陣営指導者の出身部族を支持基準にする人が増えた。陸自を敵視する反米指導者サドル師派の1部は「占領軍撤退」を掲げ一定の支持を集めている。
 サマワを州都とするムサンナ州に振り分けられたのは、全国最少の5議席バグダッドなどに比べ治安が安定しているため、市内では大人数を集めた演説会や、候補者のポスターを掲げてのデモが連日続く。
 イスラムシーア派の保守的な住民が多いサマワは、同派宗教勢力でつくる与党「統一イラク同盟(UIA)」の地盤。しかし不動産業のワリド・サルマンさん(39)は「UIAは電力不足も雇用問題も解決できなかった。もう支持しない」。政党より、自らの部族指導者が率いる陣営を支持する声が目立つ。




■TV舞台に「中傷合戦」 イラク総選挙、過熱気味


◎正統政府樹立に向けた総選挙を15日に控え、イラクでは各民族、宗派、さらには宗教勢力を基盤としない世俗派など各陣営の選挙運動が過熱している。街中が候補者のポスターで埋め尽くされ、新聞やテレビは選挙関連のニュース一色。ただ、政策論争は影が薄く、各陣営はメディアを通じて対立陣営を攻撃し、中傷も横行している。
 候補者や政党幹部の暗殺、自動車爆弾などによる大規模テロが続く首都バグダッド周辺では、街頭演説はあまりに危険。選挙運動の主戦場はメディアだ。有力陣営による記者会見や討論会が、各陣営に近いテレビ局などで連日報じられている。




イラクでまた虐待発覚 米紙報道、激しい拷問も


◎【ワシントン12日共同】12日付の米紙ワシントン・ポストは、米国とイラク双方の当局者の話として、イラク内務省の特殊部隊が運営するバグダッドの収容施設で収容者13人が虐待を受け、うち12人が「激しい拷問」を加えられていたと報じた。
 イラクでは、内務省の拘束下にあったイスラムスンニ派の容疑者ら多数が虐待を受けたとされる問題が11月に表面化した。
 同紙によると、虐待が明らかになったのは、これまで確認されていたのとは別の施設。当局者は(1)骨を折る(2)つめを引き抜く(3)電気ショックを与える(4)たばこの火を首や背中に押しつける−などの拷問が行われていたことを明らかにした。虐待や拷問を受けたのがスンニ派かどうかなど詳細は不明。
 イラクのジャファリ首相は虐待問題の発覚後、全国の収容施設に対する調査を指示していた。




■組閣完了は1月以降か イラク、連立協議難航も


◎【カイロ12日共同】15日のイラク総選挙後、正統政府の発足までには、大統領選出と首相指名、組閣、さらに議会承認という手続きが必要だ。暫定憲法イラク基本法は原則的に年内の政府樹立を定めているが、各会派とも単独過半数の獲得は難しく、連立交渉は難航しそうだ。組閣完了は1月以降となる公算が大きい。
 バグダッドの米政府当局者は、確定した選挙結果の発表自体が年末以降にずれ込むとの見通しを示し、組閣に向けて「民主的議論には時間が必要」との立場。規定上は政府発足が3月以降になる可能性すらある。
 総選挙で選出される議会(定数275)は初招集から30日以内に、3分の2の賛成で大統領と2人の副大統領を選出。
 象徴的な存在の大統領選出が速やかに進んでも、実権を握る首相の指名、承認をめぐる会派間の交渉には時間がかかると想定される。




連邦議会選の事前投票始まる 厳戒態勢を強化


イラク民主化の節目となるイラク連邦議会選挙の事前投票が12日、国内の病院などで始まった。13日からは欧米諸国などで在外イラク人が投票する。イラク移行政府内務省は11日、国内一般投票日の15日に向け、武装勢力による選挙妨害阻止のための治安対策を発表、厳戒態勢を強化している。(毎日)