15日に迫った国民議会選の行方


■15日、イラク国民議会選 “宗教VS.世俗”鮮明


◎アラウィ前首相・クルドスンニ派で連立も
 【カイロ=加納洋人】フセイン旧政権崩壊後の本格政権を発足させることになるイラク国民議会選挙(定数二七五)の投票が十五日に迫った。
 一月末の総選挙をボイコットしたイスラムスンニ派勢力も今回は参加し、各陣営は活発な選挙戦を展開している。なかでも、世俗勢力が結集したアラウィ前首相(シーア派)らの会派への票の行方が注目されており、移行政府の中枢を握るシーア派宗教政党を中心とした連合会派との間で、「宗教勢力対世俗勢力」の対決の構図が強まっている。
 産経新聞イラク人通信員によると、首都バグダッドでは、各所に選挙ポスターが張られるなど市内は選挙ムード一色。ただ、治安状況が悪いため、街頭演説などは行われず、各陣営はもっぱらテレビ、ラジオや新聞広告などを通じて支持を呼びかけている。
 選挙初参加となるスンニ派勢力は、十月の国民投票で新憲法草案賛成に回った有力政党「イラクイスラム党」を中心に、スンニ派三派が新たな連合会派「イラク合意戦線」を結成して、選挙に臨んでいる。
 同派のイスラム教法学者団体「イラクムスリムウラマー協会」は六日、「占領下での政治プロセスには参加できない」との声明を発表したものの、投票参加は各人の判断に委ねるとしており、スンニ派勢力は本格政権下での影響力確保を狙ってくるとみられる。
 今回の選挙は前回と同様、民族・宗派別の連合会派による対決という構図に加え、新たに「宗教対世俗」の対決の構図が鮮明になっている。
 暫定政府首相を務めたアラウィ氏は、ヤワル副大統領(スンニ派)やパチャチ元外相(スンニ派)の陣営やイラク共産党など、幅広い世俗勢力を結集した連合会派「イラク国民名簿」を結成し、前回選挙で百四十議席を獲得して議会第一勢力となったシーア派連合会派「統一イラク同盟」(UIA)との対決姿勢を強めている。
 UIAは、ジャアファリ首相率いるダアワ党やイラクイスラム革命最高評議会(SCIRI)などシーア派宗教政党を中心とした会派で、アラウィ氏は現政権に対して、「経済が壊滅的状況になった」「旧政権より悪い(虐待や拷問が行われている)」と厳しい批判を展開。UIA側は「アラウィ政権時代の混乱を引き継いだだけだ」「アラウィ氏らは、新たなバース党(旧政権時代の支配政党)をつくろうとしている」と反発している。
 こうした中、シーア派住民に大きな影響力を持つ同派最高権威、アリ・シスターニ師は三日、宗教的でない会派には投票しないよう呼びかける声明を発表し、事実上のUIA支持を表明した。世俗勢力の伸長に一定の歯止めをかけることを狙ったものとみられる。
 選挙結果次第では、アラウィ氏らの会派は、世俗色が強いクルド人の連合会派「クルド同盟」やスンニ派の連合会派「イラク合意戦線」との連立を模索し、UIAに対抗してゆくものとみられる。(産経)




■オーストラリア軍、5月以降もイラクに駐留する見通し=ハワード首相


◎[キャンベラ 9日 ロイター] ハワード豪首相は9日、日本政府がイラクに派遣している陸上自衛隊の派遣期間を1年間延長したことを受け、オーストラリア軍は来年5月以降も自衛隊の警護にあたる公算が大きい、との見通しを示した。
 オーストラリアはイラクやその周辺に約1300人を派遣。イラク南部では、イラク軍の訓練や自衛隊の安全確保にあたっている。
 小泉首相は8日、12月14日に期限が切れる自衛隊イラク派遣を1年間延長する方針を発表した。
 ハワード首相は地元ラジオに対し「小泉首相の発言は、自衛隊が丸々1年間イラクにとどまることを自動的に意味するわけではない。自衛隊は5月までは確実に駐留するだろうし、それ以降もとどまる可能性がある」と述べた。
 その上で、オーストラリア軍が5月を待たずに撤収する可能性は低いとした上で、駐留期間については現地の進展によるところが大きい、との見解を示した。
 小泉首相とハワード首相は、来週マレーシアで会談する予定。