女性証人が「拷問」証言 イラク元大統領非難


フセイン裁判・第3回公判 法廷の正当性争う 弁護団退廷で一時中断


◎【カイロ=加納洋人】イラクフセイン元大統領と旧政権幹部七人の犯罪を裁く特別法廷の第三回公判が五日、バグダッドで開かれた。弁護団は冒頭から同法廷の正当性について争い、裁判は正当だとするアミン首席判事(クルド人)との激しいやり取りの末、退廷し、審理は一時中断するなど混乱した。
 フセイン弁護団には、新たに旧ユーゴスラビアミロシェビッチ元大統領の弁護を務めるクラーク元米司法長官とカタールのヌアイミ元法相が加わったが、首席判事は当初、両氏の発言を許可せず、後日、書面で申し立てるよう命じた。これに抗議した弁護団はいったん退廷した。こうした中、フセイン元大統領は「この法廷は、占領者の法に基づいている」などと批判し、「イラクは永遠なり」「アラブ国家は永遠なり」と叫んだ。
 その後、審理が再開されたが、発言が許可されたクラーク氏は弁護団の安全が確保されない限り公正な裁判は不可能だと強調。ヌアイミ氏は、米占領下で設立された同法廷は国際法に違法すると主張した。
 被告八人は一九八二年に中部ドゥジャイル村で発生したイスラムシーア派住民約百五十人の虐殺事件への関与が問われている。この日、証人が初出廷し、「多くの人が連行され、拷問を受けて殺された。バルザン・イブラヒム被告らが指揮した」などと証言した。同被告はフセイン元大統領の異父弟で、事件当時、情報機関の高官だった。




■「首をくれてやる」 公判でフセイン


◎【カイロ5日共同】戦争犯罪で起訴されたイラクサダム・フセイン元大統領(68)は5日、バグダッドイラク高等法廷で開かれた公判で「首がほしければくれてやる」「私は死刑を恐れない」と述べるなど、長広舌を振るい、変わらぬ意気軒高ぶりを見せつけた。
 フセイン被告は「サダム・フセインを弁護するためでなく、イラクが気高くあり続けるための率直な発言を許してほしい」と述べ、持論を展開。
 アミン裁判長に対し「あなたに圧力がかかっているのは分かっている。わたしの息子(国民)の一人と対峙(たいじ)しなければならないのは残念だ」と、被告を裁く裁判長の職務にいったんは理解を示した。
 しかしAP通信などによると、「こんなゲームが続いてはいけない。サダム・フセインの首がほしければくれてやる」とも述べて裁判長を挑発。




■国連がイラク選挙支援の責任者解雇へ セクハラなど理由に


◎【ニューヨーク高橋弘司】15日に行われるイラク総選挙を支援する国連の女性責任者が部下に対するえこひいきやセクハラなどを理由に解雇されることが5日、明らかになった。国連報道官が一部メディアの報道を確認した。ボルトン国連大使が「なぜ、今なのか」と批判するなど、重要選挙を前にした決定が物議を醸している。
 解雇されるのは選挙支援部門のカリーナ・ペレリ部長(48)=ウルグアイ出身。国連報道官は5日の会見で、アナン事務総長が解雇を決定したとのAP通信などの報道について「決定はなされた。まだ本人に通知が届いていない」と正式発表まで詳細を明らかにできないことを強調した。
 同部長をめぐっては、部下の訴えを受け国連が委託した外部の管理会社が8月、「一部の部下に対するえこひいきがひどく、性的ジョークも絶えない。職員の多くが不快感を持つほどだ」との報告書をまとめていた。
 同部長はイラクの移行国民議会選挙(1月)、新憲法承認のための国民投票(10月)などの支援に尽くしてきたほか、正式政府発足に向け15日に実施される総選挙の準備にもかかわってきた。アフガニスタンなど他の紛争地でも選挙支援に深くかかわり、その手腕が高く評価されていた。
 ボルトン国連大使は5日、「選挙が10日後に迫った時期になぜ、決めたのか。何の緊急性も見当たらない」と批判しており、解雇は選挙後にずれこむ可能性もある。(毎日)




多国籍軍撤退は当面困難 イラク移行政府首相


◎来日中のイラク移行政府のジャファリ首相は6日、都内の日本記者クラブで会見し、陸上自衛隊を含めたイラク駐留多国籍軍の撤退の見通しについて「撤退しても平和や安定が続く保証がなければならない」と述べ、現在の治安情勢では、撤退は当面難しいとの認識をあらためて示した。
 米政府がイラク各地で進めている、軍部隊と文民で構成する「地方復興チーム(PRT)」派遣計画に、南部サマワでの任務を終えた陸自の参加を打診したことに関しては「いかなる支援でも歓迎する」と述べるにとどまり、イラク側として希望する具体的場所、任務などについて明言することは避けた。
 首相はまた、イラク高等法廷に戦争犯罪で起訴されたフセイン元大統領が法廷の正当性を批判していることについて「(元大統領は)自由に発言する機会を与えられており、裁判は民主的だ。介入するつもりはない」と強調した。(共同)




イラク首相が対イランで今後改善目指すと発表 日本記者クラブ


イラク移行政府のジャファリ首相が6日、東京都千代田区の日本記者クラブで会見した。首相は対イラン関係について、「重要な利害関係を持っており、互いによく理解しあうことが必要だ」と説明。そのうえで「国境を画定し、主権を尊重しあえればオープンな関係を築くことができる」と述べ、今後改善を目指していく意向を示した。イランの核開発問題には言及しなかった。
 また、イスラムスンニ派については「憲法草案の起草にも積極的にかかわり、国民投票にも参加した。今後も政治プロセスに加わっていく」と述べ、今月15日予定の総選挙でも民族・宗教を問わず幅広い勢力が参加すると強調した。【前田英司】(毎日)




■2人が自爆、36人死亡 バグダッド


◎【カイロ高橋宗男】イラク警察によると、バグダッド東部の警察学校で6日、2人が自爆し、警察官ら少なくとも36人が死亡、72人が負傷した。AFP通信が伝えた。
 爆発があったのは6日の日中で、2人は爆弾を仕掛けたベストを身につけて校内に侵入したらしい。AP通信によると、1人は食堂で自爆し、もう1人は点呼中の教室で自爆した。死者には女性警察官5人が含まれているという。(毎日)




■女性証人が「拷問」証言 イラク元大統領非難


◎【カイロ6日共同】住民虐殺などで起訴されたイラクサダム・フセイン元大統領(68)ら8人の公判が6日、バグダッドイラク高等法廷で前日に続き開かれ、女性として初めての証人が登場、「服を脱がされ、拷問された」などと涙声で訴えた。
 女性は1982年にイスラムシーア派住民らが虐殺された中部ドジャイルの住民。フセイン元大統領暗殺未遂事件の後、治安当局の取り調べで「服を脱ぐよう強制されて両手を縛られ、電気ショックを受けた」と、何度もむせび泣きながら語った。
 当時のアブグレイブ刑務所に家族らとともに収監され、その後、南部サマワ近くの砂漠地帯で4年間、食料の乏しい悲惨な生活を強いられたと訴えた。拷問の責任者を尋ねる裁判長に「サダム・フセイン(元大統領)と彼の仲間だ」と非難した。