テロ・撤退の見通し・駐留軍への攻撃


イラク駐留 米軍戦略「テロ一掃、治安維持」 ベトナム戦争に学ぶ


◎【ワシントン=有元隆志】米議会でイラクからの米軍早期撤退の是非をめぐる論議が高まる中、米軍は進行中の「クリア・アンド・ホールド(一掃し、維持する)戦略」を継続している。治安維持とイラク人部隊の強化に力点を置くことにより、米軍の兵力削減を目指すものだ。ただ、即効薬ではなく、その成否は米国内が駐留長期化にどれだけ持ちこたえられるかにかかっている。
 この戦略を明らかにしたライス国務長官は、十月十九日の上院外交委員会の公聴会に出席、「われわれの戦略は、一掃し維持し、そして建設することだ」と証言した。ブッシュ大統領も同月二十五日の演説で、「テロリストが支配する地域を一掃し、これらの地域をしっかりと維持し、永続するイラクの民主主義を建設する」と述べている。
 十一月七日付の米紙、ウォールストリート・ジャーナルによると、この文言は、ベトナム戦争時のエイブラムス駐留米軍総司令官(一九六七−七二年)が用いたものと同じであり、この戦略を説明した「よき戦争」(ルイス・ソーリー著)は、米政府、軍高官らの間で読まれているという。
 同書によると、エイブラムス総司令官はそれまでの「捜索し、破壊する」戦略を転換、現地軍の訓練を強化し、隣国からの敵の補給線を遮断し、首都の安全確保に努めた。
 米軍はイラクで同様に、治安部隊を育成、シリアとの国境沿いでは掃討作戦を続けている。
 ただ、ベトナム問題にかかわったロバート・ノーター氏は九日付のワシントン・ポスト紙上で、「南ベトナム軍は強い意志を持った北ベトナム軍に対抗できなかった」と指摘。イラクには北ベトナム軍のような敵はいないものの、イラク治安部隊に国を守る決意があるかは「不明だ」と、戦略の行方に疑問も呈する。
 ベトナム従軍経験のあるヘーゲル上院議員共和党)も十五日の講演で、「戦略が機能するだけの米軍兵力があるか懸念している」と述べた。
 最新の世論調査で63%がブッシュ政権イラク政策を支持しないと答えるなど国内の不満は高まってはいるものの、十八日の下院本会議で、即時撤退を求める決議案が四〇三対三の圧倒的な反対多数で否決されたように、政府、議会には駐留継続はやむなしとの見方が多い。
 ただ、兵力削減を求める声は強く、ロイター通信によると、国防総省当局者は二十三日、来夏には現在の約十五万五千人から十万人規模への削減も検討中だと述べた。
 もっとも、兵力を削減しない案もあるといい、今後の展開は政治状況とともにイラク治安部隊の育成状況に左右されるところが大きいようだ。(産経)




■英豪キャンプ狙いロケット弾=宿営地外着弾、被害なし−イラクサマワ


◎【サマワ24日時事】陸上自衛隊が駐留するイラク南部サマワの英軍などによると、23日午後7時30分ごろ(日本時間24日午前1時30分ごろ)、英・豪軍の宿営地「キャンプ・スミッティ」周辺で爆発音が確認された。両軍によると、ロケット弾2発が宿営地外に着弾したが、両軍には被害はなかった。
 サマワの豪軍司令官ピーター・ショート中佐によると、1発は同宿営地から約1キロ離れたところに着弾し爆発した。もう1発の着弾地点は不明だという。 




■増員せず、イラク軍に任務移譲=来年5月「駐留の区切り」強調−豪国防相サマワ


◎【サマワ25日時事】オーストラリアのヒル防相が24日、陸上自衛隊が駐留するイラク南部ムサンナ州サマワを訪問し、交代したばかりの豪軍部隊を視察した。記者会見したヒル防相は「イラク軍に治安維持任務を移譲していく上でも、駐留する豪軍兵士を増員するつもりはない」と語った。
 さらに、ヒル防相は「豪軍は来年5月でムサンナ州での任務が丸1年を迎える。それ以降については、日本がサマワでの駐留を継続するかどうかや、治安維持を移譲されたイラク軍の能力による」と述べ、来年5月が駐留の区切りになることを改めて強調した。 




■ヒッラで自動車爆弾攻撃、死者4人・負傷者14人の可能性


◎[バグダッド 24日 ロイター] イラクの首都バグダッド南方のヒッラで24日、市場にいた人々を狙った自動車爆弾攻撃が発生した。
 警察では当初、死者が最大14人、負傷者は23人と発表していたが、その後、死者は最大4人、負傷者は14人にとどまった可能性があるとしている。




イラクアルカイダ支部バグダッド連続ホテル自爆犯のビデオを公開


◎[ドバイ 24日 ロイター] イラクアルカイダ支部はウェブサイト上で、先月バグダッドのホテルで少なくとも15人の死者を出した3件の連続自爆攻撃の実行犯として、3人の男のビデオ映像を公開した。
 ビデオでは、イラク人とみられる名前を持つ3人が、パレスチナ・ホテルとシェラトン・ホテルの攻撃に使用したと思われる自動車に乗り込む場面が映っている。
 3人の1人でアブ・ドハムという名の男は、「多くの人々が裏切ったイスラム教国家よ、私は、真実の戦士たちが背徳者である米国人に怒りをぶつけるためにやってきたことを伝える」と語った。




■新政府発足、年内は困難 1月末期待とイラク外相


◎来日中のイラク移行政府のジバリ外相は25日、都内で共同通信などと会見、来月15日の総選挙後、新たに樹立する正統政府について「来年1月末まで(の発足)を期待する」と述べ、暫定憲法であるイラク基本法が規定する「年末までの発足」は困難との考えを示した。
 組閣をめぐりイスラムシーア派スンニ派クルド人など各勢力の調整が難航するとの認識に基づく発言。移行政府閣僚が、正統政府発足が予定より遅れるとの見通しを明らかにしたのは初めて。
 一方、正統政府発足後はイラクの自立が進むため、南部サマワで活動する陸上自衛隊については「永久に駐留することを望んでいるわけではない」と述べた。(共同)