カシミールの越境許可延期


カシミール 越境許可延期 印パ和平進展、影落とすテロ


◎【バンコク=岩田智雄】インドとパキスタンが支配をめぐり対立を続けてきたカシミール地方で、パキスタン地震を契機に両国が住民たちの実効支配線(停戦ライン)の越境を認めるとしていた七日を迎えた。しかし、双方は越境者名簿の交換が終わっていないとして越境許可を延期し、この日は被災地への支援物資の交換だけが行われた。インドでは最近、イスラム過激派の仕業とみられるテロが相次いでおり、越境者の受け入れに慎重になっているとみられる。
 両国は実効支配線の五カ所に越境地点を設け、両国支配地域に分断されている被災住民の相互訪問を可能にすることで合意していたが、七日は一カ所で物資の交換が行われるだけにとどまった。
 インド側のジャム・カシミール州当局者はAP通信に、越境が可能になるまでにさらに一週間ほどかかり、しかも越境は週一回に限られるとの見方を示した。物資の交換地点は今後三カ所に増設される。
 両国は今年四月から双方の支配地域を結ぶ直行バスを二週間に一本の割合で運行させており、住民による越境はすでに始まっている。今回の合意で越境の機会は拡大するとはいえ、許可を得るには両国政府による事前の点検など制限が加えられることに変わりはない。
 しかも、今月二日にはジャム・カシミール州で自動車爆弾を使った自爆テロが発生、カシミール地方のパキスタンへの帰属を求めるイスラム過激組織ジェイシモハメドが犯行声明を出した。先月末にニューデリーで発生した爆弾テロでもパキスタンを拠点とするイスラム過激組織の関与が疑われている。
 背景には和平進展により実効支配線が「国境化」してしまいかねないことへの反発があるとみられ、テロリスト侵入を警戒するインドとしては実効支配線の開放には慎重にならざるをえない。
 一方、被災地では八日で地震から一カ月を迎える。死者はパキスタンで七万三千二百七十六人、インドで約千三百人にのぼる。国連は五億五千万ドルの支援金の拠出を各国に求めているが、拠出が約束された金額は一億三千三百万ドルにとどまっている。(産経)




地震死者8万7000人超 世銀など試算、パキスタン


◎【イスラマバード8日共同】パキスタン財務省報道官は8日、発生から1カ月がたったパキスタン地震の死者数について、世界銀行などの調査で8万7350人に達したことを明らかにした。うちインド側の死者は約1300人。地震の救援活動を統括しているパキスタン政府の委員会は今月2日、公式死者数を7万3276人と発表していた。
 財務省の死者数は、世界銀行アジア開発銀行、国連などが今月19日にパキスタンで開催予定の復興支援国会議に向け、共同で地震の被災地を調査、被害の規模を試算した。調査には日本の国際協力銀行も参加している。




■20万人分の救援物資が依然、不足 国連


◎国連のイゲランド人道問題調整官が7日、パキスタン地震から1カ月後の救援状況について記者会見を行い、山岳部に住む約20万人への救援物資が依然、不足していると訴えた。うち4万〜2万人には救援の手が全く届いていないという。天気予報ではまもなく雪が降り始め、同調整官は「救援は時間との闘い」と強調した。(毎日)