憲法草案賛成過半数が確実


イラク国民投票 賛成、過半数が確実


イラクで15日に行われた憲法案の是非を問う国民投票の開票作業が16日、本格化した。憲法案起草を主導した多数派のイスラムシーア派クルド人に賛成票が多く、全体で賛成が過半数となるのは確実な情勢だ。一方、憲法案への反対が根強いスンニ派の多い地域では反対票が賛成を上回っているとの情報があり、否決される可能性も残っている。


 各種の非公式集計によると、イラク総人口の計8割近くを占めるシーア派クルド人の間では、賛成が過半数となる情勢だ。朝日新聞の助手が選管から入手した情報では、自衛隊が駐留する南部ムサンナ州では賛成が9割を占めた。同州はシーア派が多数を占める。

 この情勢を受けてライス米国務長官は16日、訪問先のロンドンで「ほとんどの人々は、おそらく憲法案は承認されたと考えるだろう」と述べ、憲法案承認への期待感を見せた。

 これに対しスンニ派政治組織「イラク国民対話」のムトラク代表は「長官の発言は、選管に憲法案を通せとサインを送ったということだ」と反発した。


 国民投票では、「憲法案に全国で過半数が賛成しても、全18州中の3州で反対が3分の2を超えれば否決」との規定がある。人口の2割を占め、法案への反対が根強いスンニ派は、サラフディンなど中北部4州に集中している。

 ロイター通信などによると、サラフディン州では約70%が反対票を投じ、米軍の軍事作戦が続いたアンバル州ファルージャでは99%が反対票だったという。両州では反対が3分の2を超える可能性がある。


 一方、モスル周辺に多くのクルド人がいるニネベ州では、開票率約65%の段階で75%が賛成票だったという。残るディヤラ州にはシーア派がおり、この州でどこまで反対が伸びるかが焦点となっている。アンバル州など3州で反対票が賛成を大きく上回り、憲法案が否決される可能性も残っている。(朝日)




イラク国民投票 「反対」は2県に 新憲法草案、承認の公算


◎【カイロ=加納洋人】イラク憲法草案の是非を問う国民投票の開票作業が十六日、本格化した。草案に反対するイスラムスンニ派勢力が多い中西部から北部地域の投票率は予想外に高く、中部サラハディン県など二県で反対票が三分の二を超える可能性がある。スンニ派住民の多くが投票に参加し反対票を投じたためだ。ただ、草案は多数派のシーア派クルド人勢力の広範な支持を得て、最終的に承認される公算が大きい。

 ライス米国務長官は十六日、訪問先のロンドンで「草案はおそらく承認される」と述べた。


 選挙管理委員会によると、全国の登録有権者数千五百五十万人のうち一千万人以上が投票した。投票率は64%前後とみられ、一月末に実施された国民議会選挙の58%を上回る見通し。選管は十六日以降、各県の集計状況を順次発表し、二十日に暫定集計結果を公表する予定。異議申し立て期間を経て確定結果を発表する段取りだ。


 草案は全国の賛成が過半数でも、三県で三分の二以上の反対があれば否決される規定だ。中西部から北部のアンバル県、ディヤラ県、サラハディン県、ニネベ県ではスンニ派住民が多数を占めており、スンニ派のうち草案に反対する勢力は、これら四県で反対票を集め草案を否決することを目指してきた。


 フランス通信(AFP)によると、フセイン元大統領の出身地ティクリートのあるサラハディン県の投票率は約80%で、中間集計段階で反対票が71%に達している。また、アンバル県でも反対票は三分の二を超える勢いで、両県では不承認の可能性が高い。


 一方、残るニネベ県にはクルド人が多く、ディヤラ県にもシーア派アラブ人が相当数居住しており、両県で反対票が三分の二以上に達するのは難しい状況だ。


 しかし、一月の国民議会選挙を事実上ボイコットしたスンニ派住民が、予想を上回る高い投票率で反対の意思表示をした意味は大きい。今年末までに行われる総選挙や、その後の憲法改正協議といった今後の政治プロセスで、スンニ派がその影響力を増すのは確実だ。(産経)




■「世界の平和にプラス」 米大統領イラク投票歓迎


◎【ワシントン16日共同】ブッシュ米大統領は16日、イラク憲法案の是非を問う国民投票の実施を「イラクと世界の平和にプラスになる」と歓迎。1月の国民議会選挙よりも高い投票率が得られたことと、選挙妨害を狙った武装勢力による攻撃が1月よりも減ったことを「良いニュースだ」と高く評価した。ホワイトハウスで記者団に語った。

憲法案は承認が濃厚で、ブッシュ政権はこれを弾みに2カ月後の総選挙、年内の正統政府発足という民主化プロセスを予定通り進め、米軍撤退にめどを付けたい意向だ。

大統領は特に、連邦制などに反対するイスラムスンニ派が投票に参加した意義を強調。国際テロ組織アルカイダに対して、「イラクは暴力ではなく、平和的な投票を通じて将来を決めるという明確なメッセージを送った」と述べ、イラク民主化の流れを止めることはできないと訴えた。



イラク国民投票で、新憲法草案が可決される見通し強まる


◎[バグダッド 16日 ロイター] 15日に実施されたイラクの新憲法草案の是非を問う国民投票では、同草案が承認される見通しが強くなった。

 暫定集計結果によると、大半の州では予想通り地域間で賛否が分かれ、2003年の米国主導の連合軍によるイラク侵攻以来の民族間・政治的緊張を反映する形となった。

 スンニ派が多い一部の地域では高投票率にもかかわらず、反対派が否決に十分な「反対」票を得られなかったもよう。憲法草案はイラク全18州中少なくとも3州で3分の2以上の反対票があれば否決される。

 イラクのジバリ外相は、CNNに対し、新憲法草案可決の公算が強くなったとの見方を示し、「恐らく可決されるだろう」と語った。

 厳戒態勢が敷かれたため、投票はほぼ問題なく終了したが、米軍の情報によると5人の米軍兵が西部のスンニ派居住地域で死亡した。これでイラクにおける米国側の死者数は1971人となった。




イラク、12月15日に国民議会選挙を実施=大統領府


◎[バグダッド 16日 ロイター] イラク大統領府は、12月15日に国民議会選挙を実施すると発表した。

 昨年作成された暫定憲法では、新憲法草案が国民投票で可決されても否決されても、2005年12月15日までに国民議会選挙を実施する必要があると明記されている。

 15日に行われた国民投票の結果はまだ判明していないが、初期の集計では、承認される公算が大きいとみられている。




イラク憲法案の承認濃厚 予想以上に賛成票伸長の見方


◎15日に実施されたイラク憲法案の是非を問う国民投票で、反対が多いとみられている地域で賛成票が予想以上に投じられているとの見方がメディアで報じられている。

 憲法案への賛成は、イラク全体で過半数となるのは確実な情勢となっている。しかし「イラク全体で過半数が賛成しても、3州で反対が3分の2を上回ると否決になる」との規定があるため、反対派の多いスンニ派が集中する中北部4州が焦点となっている。

 このうち、サラフディン州とアンバル州では反対が3分の2を超える可能性がある。一方、少数民族クルド人も多い北部ニネベ州では、ロイター通信は地元選管の話として「開票率65%で75%が賛成」と伝えた。ディヤラ州についてAP通信は「7割が賛成票」と報じた。こうした見通しが正確ならスンニ派の反対は否決条件に届かず、承認は濃厚とみられている。(朝日)




イラク米軍、スンニ派地帯の県都武装勢力70人殺害


◎【カイロ=柳沢亨之】イラク駐留米軍は17日、同国中部ラマディ一帯で16日、空爆を複数回にわたり実施、武装勢力約70人を殺害したと発表した。
 ラマディは、憲法草案を巡る国民投票で反対票が多かったとされるイスラムスンニ派地帯「アンバル県」の県都。AP通信は目撃者の話として、死者のうち少なくても39人が民間人だと伝えており、住民の「反憲法感情」に火を付ける恐れもある。

 ラマディでは投票日の15日、米兵5人が武装勢力に殺害される事件が起きたばかりで、米軍の報復攻撃の可能性もある。米軍では「民間人死傷者が出たとの報告はない」としている。(読売)




■ラマディ近郊で空爆、「武装勢力70人殺害」と米軍発表


イラク駐留米軍は17日、中西部アンバル州ラマディ近郊で16日に空爆を行い「武装勢力70人を殺害した」と発表した。これに対しAP通信は17日、目撃者の証言を元に「少なくとも39人は市民」と報じた。イラク各地では米軍の過剰な武力行使や誤射が相次いでおり、反米感情を募らせる原因となっている。

 米軍の発表では、ラマディ近郊で16日、武装勢力の攻撃で破壊された米軍車両の周辺に20人ほどが集まり爆弾を仕掛けていたのを米軍戦闘機が発見し、誘導爆弾で爆撃した。

 また、別の地域でも米軍ヘリが武装勢力の銃撃に応戦して10人を殺害、さらに武装勢力が逃げ込んだ建物を空爆し、40人を殺害したとしている。

 一方、AP通信は、目撃者や地元部族長の話として、ラマディ近郊で死亡したのは25人で、いずれも米軍車両の残骸(ざんがい)の見物や部品拾いのために集まっていた市民だったと伝えた。また、40人が死んだとされる建物にいたうち少なくとも14人は市民だったという。(朝日)




■政治参加路線に限界も スンニ派に「数の壁」


◎【カイロ17日共同】イラク国民投票で、新憲法案に反対のイスラムスンニ派が予想外の高投票率を示し、同派の政治参加が進んだと評価されている。しかし、人口の約20%にすぎないスンニ派が議会で早期憲法改正などの要求を実現するには「数の壁」があり、同派の政治参加路線にも限界が見えている。

武装勢力の支持基盤とされるスンニ派に政治参加に対する失望が広がれば、武装勢力への共感が再び増幅しかねない。12月の総選挙へ向けて、シーア派の世俗派やクルド人勢力との連携が鍵を握りそうだ。

今年1月の国民議会選挙では、スンニ派の多くは「米占領下で公正な選挙は不可能」などとして参加しなかった。スンニ派を政治の枠組みに取り込み、不満を吸収することが、武装勢力の支持基盤を切り崩すためにも、課題となっていた。