イラク武装組織 対立が表面化


イラクでテロや攻撃を続けるスンニ派武装組織間の対立が表面化している。外国人戦士が多数合流し、市民の犠牲もいとわないテロを続けるザルカウィ幹部の「イラクアルカイダ機構」に対し、市民の反発が強まっているためとみられる。米軍はこの分裂を好機ととらえ、攻勢を強めている。

 米軍の掃討作戦が続くイラク西部アンバール州などのスンニ派地域では、政府の警察権があまり及んでいない。このため実態は知られていないが、武装勢力の「内紛」を示す情報はしばしば伝わっている。州都ラマディの住民で現地の事情を知るナワフ・アルオマル氏(27)は朝日新聞バグダッド支局の取材に「ザルカウィ派と(武装組織の)1920年革命旅団が、支配権を巡って銃撃戦を繰り返している」と話した。

 8月31日付米軍広報によると、シリア国境カイムでも8月、ザルカウィ派と地元部族との衝突が起き、多数の死傷者が出た。ザルカウィ幹部とされる人物は声明で、自派と対立するカイムの部族を「裏切り者」として攻撃したと認めている。

 政治プロセスの参加を巡っても、内部の対立は浮き彫りになっている。ラマディの宗教、部族、政党の各指導者が6月と8月、憲法起草への参加をモスクで話し合った際、ザルカウィ派とみられる集団に銃撃される事件が起きた。

 ザルカウィ派は、政治プロセスへの参加者を殺すと脅している。しかし武装勢力のうち「イラクイスラム軍」などは8、9月、相次いで「国民投票に参加したうえで、ノーの票を投じよ」と呼びかけた。


 反米で一致していたはずの武装勢力内部で反目が生まれた背景には、ザルカウィ派の過激化があるとみられている。ザルカウィ派は9月14日、「対シーア派全面戦争」を宣言した。イラクでは仕事や婚姻を通じてスンニ派シーア派の関係が深いなど一般的に険悪な仲ではなく、スンニ派の住民だけでなく、イラク人主体の武装勢力からも「ザルカウィイラクから出て行け」といった激しい抵抗を招いた。

 スンニ派に最も影響力を持つイスラム宗教者委員会のイサム・アルラウィ師は26日、「スンニ派は、シーア派の兄弟を守る決意だ。ザルカウィ派は内戦をあおっているが、孤立している」と語った。

 米軍やイラク治安組織はアンバール州などで攻勢を強める一方、アルカイダ系とその他を分裂させる世論誘導にも熱心だ。米軍のブラウン大佐は14日の会見で、「2月以降、他の武装勢力は政治プロセスへの参加を望み、アルカイダとの共闘を誤りと考えている」と述べた。(朝日)




■自爆攻撃で8人死亡 イラク北部の警察採用所


イラク北部タルアファルのイラク警察の採用所で28日、女が自爆し、イラク国民議会筋によると8人が死亡、36人が負傷した。イラク戦争後、女性が自爆したのは初めてとみられる。

 女は20代前半で、服の下に爆発物を仕込み、警官採用を希望する多数の若者が列を作っていた建物の前で爆破したらしい。現地はスンニ派が多数を占める地域だが、少数のシーア派も住んでおり、警官採用に応募していた若者の大半はシーア派だったという。

 イラクアルカイダ機構は同日、「アルバラア・ビン・マレク殉教者旅団のシスターが実行した」とする犯行声明を出したが、女の身元には触れていない。

 タルアファルでは9月初旬、米軍とイラク治安部隊が総攻撃を加え、「テロリストと外国人戦士」の排除を進めた。採用所は元米軍基地があった場所で、毎週水曜日に警官の募集作業をしていたという。(朝日)




イラク駐留米軍の削減、来年の実現は不透明=司令官


◎[ワシントン 28日 ロイター] イラク駐留米軍のケーシー司令官は、イラクは現在極めて不透明な情勢下にあり、2006年中に駐留米軍の大幅削減が実現するかどうかを判断するには「時期尚早」との見方を示した。

 イラクで14万7000人の米軍を指揮している同司令官は、今年3月と7月、イラクの政治プロセスが進展し、国内治安部隊の育成が進めば、来春か来夏に「かなり大幅な」削減ができるだろう、と予想していた。国防総省当局者は、削減規模が2─3万になるとしていた。

 ケーシー司令官は、議会で非公開の報告を行った後、イラク駐留米軍の削減が依然可能かとの記者団の質問に対し、「7月または3月に同じ質問を受けたときより、情勢がやや不透明になっている」と発言、以前よりも慎重な姿勢を示した。

 司令官は、10月15日に憲法草案の是非を問う国民投票が行われ、そこで憲法が承認されれば12月15日に新政府が選出される、と指摘した。